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ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~ポスト五輪を待ち受ける23区の勝ち目、弱り目

国の東京23区人口予測は、なぜ大外れしたのか?東京は老人ばかり“にはならない”

文=池田利道/東京23区研究所所長

 世に大きな話題を呼んだ『地方消滅』と『東京消滅』(ともに中央公論社/増田寛也)。両書は前編と後編の関係にあるが、実は将来推計にあたっての条件設定が異なっている。地方の人口減少に警鐘を鳴らした前者は「社会移動は収束しない」との前提に立ち、超高齢化が進む東京での介護破綻の深刻化を警告した後者は「社会移動は収束する」という考えに立っている。理由はいろいろあるのだろうが、どちらのほうがテーマに照らした、よりセンセーショナルな数字が出やすいかは明らかだろう。

「東京は老人ばかりになる」のまやかし

 全国の市区町村を対象とする社人研の推計は、ある程度一律な条件設定を行わないと作業が先に進まなくなってしまう。しかし、固有名詞のまちの名を主語とした未来予測に、そんな言い訳は通用しない。社会移動を読み間違うと、大外れの未来論に終わってしまいかねない。

 社会移動を読むとは、「収束するか、収束しないか」という技術的な問題ではなく、「収束しようとしているか、していないか」の構造的な変化を見極めることにある。さらに、「社会移動を収束させるか、させないか」という、自治体の施策評価を行うことも重要だ。

「東京は老人ばかりになり、大阪は外国人だらけになる」。メディアが騒ぐ、そんな未来論に惑わされる必要はない。これらはすべて、仮定の上に現われたひとつのシミュレーション結果を喧伝しているだけにすぎない。「社会移動が収束するか否か」はもとより、「収束しようとしているか否か」「収束させるか否か」という肝心な部分は、すべて考慮の外に置かれている。

 そうはいっても、長い時間の流れの中で、社会の構造は新たな局面へと移行していくものだ。自治体の施策も、時代の潮流に棹さすときは勢いがあるが、流れに抗う場合には限界が現れてくる。

 そうだとしたら、まちの未来を責任を持って語れるのは、せいぜい20年先くらいまでだろう。85年先はいざ知らず、20年後の東京は決して老人ばかりにならない。筆者はそう確信している。

池田利道/東京23区研究所所長

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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