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税金94億円投入、和歌山市ツタヤ図書館誘致メンバーに国交省関係者がずらり…必要性を無視

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
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巨額税金投入の裏側

 そうしたなか、総事業費123億円の和歌山市駅再開発計画で、図書館建設に関する費用も入れると94億円もの公金が投入されるに至った背景には、国交省の利権確保の狙いがあるのではないかとみられる。

 公共施設のハコモノ建設については「あまり利用されないものに多額の税金を使うべきでない」と否定的な見方をする市民が年々増えているなか、巨額の予算を獲得して、地方のインフラ建設を強力に推進する立場の国交省としては、そうした民意を無視した方向での事業はしづらくなっていたことは確かだろう。

 その難題を突破するために、彼らの目にとまったのが図書館だったのではないかと、ある図書館関係者は分析する。

「内閣府の『地域の経済2012』によれば、和歌山市は中心市街地活性化の基本計画を立てて実行には移したものの、『周辺への波及効果が少ない』と低い評価がされています。計画の中に集客のための新たな施設の設置等があるケースでは、目標の達成率が高いと結論づけられていて、和歌山市にはそれがない。そこで、12年以降のまちづくり計画では、集客のための新たな施設の設置に舵を切ったと考えられます。それが市民図書館の移転だったのではないでしょうか」

 和歌山市が和歌山市駅前の再開発に取り組んでいた直後に登場して話題を集めていたのが、CCCが指定管理者となって13年4月から運営を開始した佐賀県の武雄市図書館・歴史資料館だった。

 同館は、スターバックスコーヒー蔦屋書店、レンタルスペースを併設し、年中無休で夜9時まで開館するなどにより、人口5万人の町の図書館に、年間90万人を超える人が訪れたとメディアでさかんに取り上げられた。

 CCCが11年に開業した代官山蔦屋書店を手掛けたのがRIAだった。和歌山市の再開発プロジェクトを丸ごと担当していたRIAが、和歌山市駅の再開発計画にツタヤ図書館の誘致を密かに想定していたとしても、決して不思議ではない。

 だが、CCC運営のツタヤ図書館は、郷土資料の大量廃棄が問題視されたり、傘下の企業から大量の古本を購入していたことが発覚して謝罪に追い込まれるなど、不祥事が続発。自慢の入館者数も「駅ビル通過者をすべてカウントしているだけ」と、本来の図書館利用者とはかけ離れた“水増し数字”だとの批判も多い。武雄市の市民は、こう嘆く。

「来館者の大半は、SNSで話題になっている図書館がどんなものかと、県外から物見遊山で来られる人たちです。福岡から電車でも高速バスでも1時間ちょっとというアクセスの良さが功を奏して観光客は増えましたが、経済効果の実感はほとんどないですね。賑わっているのは館内のCCC店舗と、近隣の“ゆめタウン”だけ。駅前など周辺への波及効果はありませんでした。一方で、昔から通っていた人たちは、中身のない図書館には寄り付かなくなったので、多額の税金を使った意味は、いったいどこにあったのかと、いまさらながら疑問に思います」

 スターバックスのコーヒーを片手に、洋書に見せかけたダミーの空箱を眺めながらパラパラ雑誌をめくるだけの“ブックカフェ風図書館”がツタヤ図書館の本質だ。それを目玉にした駅前再開発に94億円もの公金が投入され、そのうまい汁を一部の関係者だけが吸っているとの批判を知ったとき、果たして和歌山市民は、手放しで新しい市民図書館のオープンを喜べるだろうか。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

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