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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

「手間かかり全然儲からない」…民泊、新法施行1年で廃業続出、細かすぎる規定が障害

文=鷲尾香一/ジャーナリスト

 宿泊施設の利用状況についても、届出住宅ごとに、(1)届出住宅に人を宿泊させた日数、(2)宿泊者数、(3)延べ宿泊者数、(4)国籍別の宿泊者数の内訳を2カ月に1回、都道府県知事等に報告しなければならない。このほかにも、民泊施設であることの標識を掲げることや、騒音防止・ゴミ処理などへの配慮、苦情等への対応などについて、細かな規定が設けられている。

 加えて、地方自治体によっては民泊に関する条例を制定しているため、この条例で定められたルールに従って民泊を運営する必要がある。2019年4月1日時点で全154自治体のうち、区域・期間制限を含む条例を制定している自治体が54、区域・期間制限はせず、行為規制のみの条例を制定している自治体が4ある。つまり、自治体によっては、民泊を営める区域や期間が定められているということだ。

地域間で濃淡

 こうして見ると、知人の言った「手間がかかる」は相当なものであることがわかる。これだけの手間をかけて民泊を開業しても、民泊が利用される地域には、かなりの濃淡がある。最新の民泊宿泊実績である2019年6・7月実績(届出住宅数1万8004件)によると以下のようになっている。

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 以上のデータでわかるように、宿泊日数・宿泊者数とも東京都、北海道、大阪府が圧倒的に利用されている。この3都道府で宿泊日数では全国の約72%、宿泊者数では同約62%を占めている。特に東京都は宿泊日数で全国の約42%、宿泊者数で同約34%を占めており、“一人勝ち”の状態にある。また、届出住宅あたり宿泊日数も最上位の東京都は最下位の岩手県の6.8倍も利用されており、届出住宅あたり宿泊者数では最上位の山梨県は最下位の島根県の5.5倍も利用されていることになる。

 これは、宿泊利用者のうち海外からの宿泊者が76.9%を占めており、外国人観光客の利用目的に左右されているところが大きい。ちなみに、宿泊者の国別では、中国28.1%、韓国14.3%、米国10.9%が上位3国で、この3国で全体の約53%を占めている。

 実は冒頭の知人が「稼働率も悪い」と言った要因は、前述したように利用される都道府県が東京都、北海道、大阪府に集中している点だけではない。民泊施設は、「人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないもの」と民泊新法で定められているため、宿泊施設として稼働できるのは1年のうち約半年に制限されている点もある。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、宿泊施設の増加は大命題となっている。民泊新法施行から1年を経過した現在、より効率的で有効な民泊のあり方について見直しを行う必要がありそうだ。

(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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