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ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~ポスト五輪を待ち受ける23区の勝ち目、弱り目

東京一極集中、その知られざる理由…人々が東京から出ていかなくなったことで起きる事態

文=池田利道/東京23区研究所所長

東京の「ポンプ機能」が失われていく

 さらに検証を進めよう。図表2は、図表1を転入数と転出数にセグメント分割した結果である。対首都圏近郊部(図表2-1)では、転入は大きく変化しておらず、転出が減少していることが明確だ。対地方部(図表2-2)では、近年は転入が増え、転出は横ばいという傾向が見られるものの、より長期的なトレンドとしては、転入の増加傾向以上に転出の減少傾向が大きいことがわかる。東京一極集中、その知られざる理由…人々が東京から出ていかなくなったことで起きる事態の画像3

 東京一極集中と聞くと、私たちは得てして転入のほうを意識してしまう。地方から若い人たちが東京に集まってくる。都心居住の流れに乗って、郊外部からファミリー層が東京に移住してくる。しかし、実態はそうではなく、東京に集まった人々が東京から出ていかなくなってしまっている。デフレが続き、格差が広がり、人口が減少し、衰退への坂道を転がり落ちようとしている我が国の中で、もはや頼みの綱は東京だけ。東京に集まり続ける人々の心の奥に、そんな思いがあるのだとしたら、「東京ひとり勝ち」は「東京不戦勝」を意味していることになる。

 2018年の『住民基本台帳人口移動報告』によると、23区への転入者(区内間の移動を除く、以下同)の49%が20代、22%が30代。転出は、20代が37%、30代が26%。社会移動とは、実は20代・30代のキャッチボールだ。

 その中心は、地方から東京に転入してくる20代と、より安くより広い住宅を求めて東京から郊外部に転出する30代。しかし、20代で東京から地方に転出する人も少なくない。彼らは人生でもっとも多感な時期を東京で過ごし、そこで得た知識や経験を携えて故郷にUターン、Jターンすることで、地方に活力を吹き込む牽引役を果たしてきた。故郷に帰らず東京に残った地方出身者たちは、結婚し子どもができると首都圏郊外部に居を構え、郊外部の発展を担ってきた。

 東京は、全国に活力を配分するポンプの役割を果たしてきた。しかし、東京に集まった人たちが東京から出ていかなくなると、ポンプの力は弱まり、我が国全体の地盤沈下を早める事態を招いてしまう。そして、その先には少子化が一層促進され、ポンプが空回りに陥る結末が待ち受けている。

 表面的な現象論や感情論を超え、改めて東京一極集中、23区一極集中の本質と向き合う必要がある。そうでないと、1000万人都市の出現が最後に咲いた徒花に終わりかねない。

(文=池田利道/東京23区研究所所長)

池田利道/東京23区研究所所長

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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