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警視庁が秘密裏に捜査する「13年前のある自殺」…事件化すれば混乱必至【沖田臥竜コラム】

文=沖田臥竜/作家
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13年前、「事件」が起こった都内某エリア

 人は自殺を考える時、自らの首筋に走る頸動脈を包丁でひと切りにし、息絶える選択肢を選ぶ可能性はどれほどあるだろうか。もちろんゼロではないだろう。今から13年前、そんな死があった。

 2006年春。東京都内の閑静な住宅街で、1人の男性が大量の血を流して死んでいた。司法解剖の結果、死因は失血死。死亡した男性の血液中からは、覚醒剤が検出されたのである。男性は当時、風俗店の営業関係の仕事に就いており、暴力団関係者の中には「300万を貸していた」と話す者も存在していたと言われている。男性の遺体には、頸動脈は切られていたが、争った形跡などもなく、暴力団関係者への借金、また男性自身が覚醒剤の常習者だったことなどから、「自殺の線が濃厚」となっていた。だが、あくまでも「濃厚」である。内部的には自殺として完全に処理されていたわけでもなく、また、検察庁に書類送検もされることなく、捜査書類だけが理没することになっていたのだ。

 そのような状態だったため、事件後、マスコミにも発表されることもなければ、公になることもなかった。仮に公になっていたところで、自殺の可能性が高い無名の男性の死は、大々的に報道されることもなかっただろう。

 だが去年の夏、この件をめぐって、警察当局が大きく動きを見せていたと関係者らは話している。彼らの話を総合してみるとこうだ。

 事件を担当した所轄の部署が、過去の未処理事件の書類を見返している時だった。1人の捜査官が「自殺の線が濃厚」とされていたこの事件に目を留めたという。そして、この事件の捜査が再開されることになっていくのだ。

 当時、男性が死んでいると110番通報を入れたのは、妻のAさんであった。

「Aさんは当時、警察官の事情聴取に対して、2階で寝ていて、起きて1階リビングに行くと夫が死んでいた旨の供述をしていたようです。ただこの時、Aさんは警察への110番通報以外に別の男性へ電話を入れていたというのです」(当事件を取材している犯罪ジャーナリスト)

 Aさんからの連絡を受けた男性Bは、すぐさまAさん宅へと急行。そのため、捜査当局はBが男性を殺害した実行犯ではないかと疑ったフシがあった、といわれている。だが、Bが逮捕されるようなことはなかった。

 捜査を再開させた当局はまず、Bの現在の生活状況を洗うことからスタートさせたといわれている。そしてBの状況は、いとも簡単に洗い出されることになった。なぜならば、Bは覚醒剤事案で刑務所に服役中だったからだ。捜査員は、Bのもとへ面会に訪れた。そこでBが、訪れた捜査員らにこのように述べたという。

「実はあの時、言わなかったが、Aさんから夫を殺してしまったと連絡があった」

 Bのこの供述に、当局サイドは「やはり殺人事件だったのかもしれない」と疑惑を固めたという。

 しかし、捜査は難航を極めた。すでに男性の遺体もなければ、死亡した現場も残っていない。浮上したのは、新たなる疑惑と覚醒剤で服役中のBの供述だけだ。それでも捜査当局は、勝負に出ている。Aさんの実家に家宅捜索をかけたのだ。捜査当局のただならぬ雰囲気を察知した某テレビ局もその時、現場へと急行している。だが秘密裏に捜査が進められていたために、この様子が報じられることはなかった。秘密裏に捜査が進められたのには、わけもあった。

 理由は、Aさんの現在の状況だ。

 だが、これ以上はよそう。Aさんは、あくまで疑惑の目が向けられただけで、任意による取り調べの要請はあったものの、逮捕もされていない。しかしこの話は、社会の耳目を集める、ある界隈を騒然とさせることにもなったのだ。そのため、捜査はより慎重に進められることになったという。

 結局、男性は本当に自殺であったのだろうか。それとも他殺であったのか。いまだ解決を見ないまま、時間だけが過ぎている。ただ、もしもだ。他殺だったとすれば、事件は誰もが予想できないほど、大きく弾けることになるだろう。

沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

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