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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国政府がひた隠す経済&軍事“同時弱体化”…大規模軍事パレードに滲む習近平の焦り

文=相馬勝/ジャーナリスト

ネット検閲強化

 一般市民も軍事パレードには拒否反応を示す向きが多い。中国東北部の遼寧省鞍山市と内陸部の四川省南充市で、計2人の市民が「軍事パレードに参加する兵士を殺してやる」などとネットに書き込んだなどとして、身柄を拘留された。そのうちの1人は鞍山市の37歳の男で、「さあ、北京に行こう。兵士諸君、軍事パレードに参加してくれ。だが、俺は死を恐れない。拳銃を用意して、お前たちが北京に行く前に殺してやる」などとウェイボに書き込んだところ、1時間もしないうちに警察が男の自宅を急襲し、15日間ほとんど睡眠も取ることができないほどの過酷な取り調べを受けたという。

 もう1人の南充市の24歳の男は「軍事パレードなど愚かなことだ。私やネットシチズンは軍事パレードに参加する兵士を軽蔑している」などと書き込んだほか、さらに中国政府が建国70周年を記念して製作した映画『我が国民と我が祖国』について、「兵隊がパレードしたり、戦車が走っていたり、飛行機が飛んでいるだけのつまらない映画」などと論評しており、これも当局の検閲に引っかかってしまったようだ。

 当局は身柄拘束の根拠となる法律として、2017年6月に施行された「サイバーセキュリティ法」を挙げているが、同法が刑事事件に適用されるのは極めて異例。同法70条では「国家の権威を汚したり、国家の安全保障を脅かした場合は厳罰に処する」などと定めており、中国ではネット規制が一段の厳しくなっていることがうかがえる。

経済停滞が鮮明

 一方、米中貿易戦争による中国経済の低迷は徐々に市民生活にも深刻な影響を及ぼしている。これまで中国経済の好調さを支えてきた自動車市場と不動産市場が、ここにきて急減速しているのだ。

 自動車の新車販売台数は2018年7月から連続13カ月のマイナスを記録しており、今年7月の新車販売台数は181万台と18年1月の280万台と比べると約100万台もマイナスとなっている。不動産市場においては、今年8月の全国29都市の不動産成約面積は前月比6%減で、北京や上海、広州、深圳の4大都市では同10%減を記録したほどだ。

 中国の知人は「昨年の米中両国が関税の引き上げ合戦をエスカレートさせて以来、景気は確実に落ち込んでいます。米中貿易戦争の影響でそれが不動産価格にも反映しているのは確実です」と語っている。

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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