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木村隆志「現代放送のミカタ」

『まだ結婚できない男』阿部寛の本当のスゴさ…成否のカギを握る“女優3人”の演技

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト

 また、隣に引っ越してきた早紀に自分から話しかけるのも、以前の桑野ならなかったこと。最後にシンポジウムで語った「人生100年、つまり人生には必ずセカンドステージが来るということです。結婚してもしなくてもセカンドステージが幸せかどうかは関係ないんです。そこに人生の本質はありません。人が家に合わせるなんてナンセンスだ。だから私は人間に寄り添った家をつくっていきたい」という熱いメッセージも含めて、「桑野の成長を感じさせよう」という狙いがあったのではないか。

気になる「早坂」と「パグ」の前振り

 1話放送後、ネット上では「13年過ぎても変わっていない阿部寛がすごい」と話題になっていたが、それこそ阿部の俳優としての技量が増していることの証。

 俳優が以前と同じように演じても、視聴者が「以前と同じ」と感じるかは別問題であり、「新たな役を演じるよりも難しい」と言われている。前作の後もキャリアを重ね、55歳になった阿部だからこそ「40歳から53歳になった桑野を演じられる」のであって、「見た目が変わっていないからすごい」のではないのだ。

まだ結婚できない男』は、そんな俳優・阿部寛ならではの演技を楽しむ作品であることに変わりはないのだが、それでも気になってしまうのは、前作とのからみ。

 1話でもっとも気になったのは、夏美を思わせる村上英治(塚本高史)と森山桜子(咲妃みゆ)のやり取り。英治が「ある女医さんがいてさ、すっげえいい人だったんだよ。そりゃもう桑野さんにはもったいないくらい」と話すと、桜子は「その女医さんって、最近すごいお金持ちと結婚した人のこと?」と返した。その直後に桑野が現れたため、会話が遮られてしまったが、近いうちに続きが聞けるだろう。

 もうひとつ気になったのは、桑野がペットショップに入るシーン。目につくのはチワワでもトイプードルでもなくパグ。明らかに前作のKEN(こつぶ)に似た顔で、しかも売れ残って値引きされていたため、桑野は「売れ残ったらどうなるんですか?」と店員に尋ねてしまう。しかし、その後のやり取りはなく、店員が「ありがとうございました」と桑野を見送るシーンだけが映された。

 ともあれ、前作のKENは阿部と同等クラスの人気があっただけに、今後も必ずこのパグがからんでくるはず。早坂もパグも1話の段階では前振り程度に留め、「お楽しみはもう少し先に」ということではないか。

「結婚と生涯未婚」「老後に向けた備えと孤独」などのシビアなテーマに相反するシュールな笑いの数々。近年多い「急展開で盛り上げよう」という強引な手法はなく、最後までマイペースに桑野の日々を描いていくのだろう。

 各局が力作をそろえるなか、続編であるにもかかわらず『まだ結婚できない男』が「オリジナリティでは断トツ」のドラマであることは間違いない。

(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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