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阿部誠「だまされないマーケティング…かしこい消費者行動:行動経済学、認知心理学からの知見」

サブウェイの恐怖…注文の選択肢「4400万通り」で消費者を遠ざける

文=阿部誠/東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

2.先送りの心理:時間的圧力(タイムプレッシャー)の影響

 出張帰りの飛行機の出発間際に、空港お土産を選んでいる状況を考えてみましょう。このようなとき、どれを選ぶか、あるいは何も買わないか(先送り)の決断は、どのような要因で決まるのでしょうか?

 次の3つの要因が考えられます。

1.どれほどお土産を購入する必要性があるか(意思決定への関与)

2.選択肢全体の魅力(意思決定の魅力度)

3.選択の難しさ(意思決定の難しさ)

 たとえば、仕事を任せてきた上司へのお土産であれば、手ぶらでは帰れませんが(必要性が高い)、自分のためであれば、特に欲しいものがなければ買わないかもしれません(魅力が低い)。あるいは自身のためでも、魅力的な商品がありすぎて決められないという、アイエンガーのジャム実験のような状況(選択の難しさ)もあるでしょう。

 タイムプレッシャーがある場合、人はヒューリスティックを用いて意思決定を単純化しますが、選択問題では具体的にどのようなプロセスを用いるのでしょうか?

 消費者行動研究では、以下の2つの方略を使うことが確認されています。

a) メリット/デメリットのトレードオフを計算する補償型意思決定ではなく、特徴別にスクリーニングをする非補償型意思決定を使う。

b) 商品間の違いを重視するため、選択肢のユニークな特徴に重みを置いて、共通な特徴に対しては注意を減らす。

 補償型意思決定とは、ある属性で劣っていてもそれ以外の属性で優れていれば効用が補えて、選択肢の中で一番高い効用を持つものが選ばれるというルールです。単純な例では、商品のパフォーマンスが低くても、価格が十分安ければ効用が高くなる「コスパ」を基準にした選択ルールが挙げられます。

 一方、非補償型意思決定は、自分が必要と思う属性を持たない商品は、どれだけ価格が安くても選ばないというルールです。したがって、タイムプレッシャー下では、非補償型意思決定を用いることで選択を簡単にし、先送りを減らそうとします。さらに、ユニークな特徴がポジティブで、共通な特徴がネガティブな商品から選ぶ場合であれば、選択肢間の違いに対して、より注意を払うため、意思決定の魅力が高まり、先送りを減らす効果があります。

阿部誠/東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

阿部誠/東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

1991年マサチューセッツ工科大学博士号(Ph.D.)取得後、2004年から現職。ノーベル経済学賞受賞者との共著も含めて、マーケティング学術雑誌に論文を多数掲載。『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(KADOKAWA)など著書多数。
東京大学教員紹介 阿部誠ページ

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