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立教大学、見過ごせない“財務面での懸念材料”

文=島野清志/評論家
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 いずれの項目も最下位、しかも指標によっては他校にかなり水をあけられている。一般的に良家の子女が集まりやすいミッション系は、その印象と相まって学園自体も裕福との連想が浮かびがちだが、意外な結果といえる。近年、大学では学部学科の新設増設が相次いでおり、あるいはこの種の負担によるものかと考えたが、同校が埼玉県新座市に新たなキャンパスを設けたのは1990年のことである。

 そこで立教大学の総長室広報課に電話で趣旨を説明したのち、メールを送付した。質問及び回答は次の通りである。

(1)貸借対照表の主要な指標である流動比率、固定比率、固定長期適合率(前期)を、一般的に御校のライバルと目されるMACH(明治・青山学院・中央・法政)と比較すると、すべて最下位になる。学校側としてはこの状況をどのように認識しているのか。

(2)指標からも窺えるように御校はライバル他校に比べて現預金が少なく、負債は多くなっている。その主な要因は何か。

【大学からの回答】

「本学院では、立教学院のさらなる発展のため、教育環境の充実に向け大学や中学校・高等学校の施設整備を進めてきた。その際自己資金だけではなく、外部資金を導入したことにより、貸借対照表関係比率が他の主要大学に比べて低位にあることは認識している。現在では、事業活動収支差額比率も良化し、貸借対照表関係比率は少しずつ改善してきている」(立教大学広報課)

 逆風下、あえて攻めの投資に打って出たということであろう。それもひとつの手法であり、大学のみならず、お受験組の人気を集めやすい付属中学、高校の施設を拡充することは、学園の総合力を高める点で一定の効果はあるのだろう。ただ自ら認めているように、財務内容でライバル校に見劣る点は、機動性の面から今後の学校運営の枷になることも確かだ。

 なお先の回答の末尾には、立教学院の財務状況のURLが示されていた。閲覧をして気になる部分があったので、ひとつ指摘しておきたい。前期決算の説明資料の中で以下のような件がある。

「長期的に財政状態が安定しているかを測る指標に純資産構成比率があります。数値が高いほど必要な資産を自力で調達していることを表し、財政的に安定していることを示します。本学院の同比率は76.6%と高水準かつ増加傾向にあり、健全性を確保できているといえます」

 首都圏で総学生数1万人以上の私立大学を運営する22の学校法人の同比率は、すべてこの数値を上回っている。

(文=島野清志/評論家)

島野清志/経済評論家

島野清志/経済評論家

1960年生まれ、東京都出身。経済評論家。早稲田大学社会科学部中退後、公社債新聞記者、一吉証券(現いちよし証券)経済研究所を経て92年に独立。以降、教育をはじめ、経済、株式などについての著述、評論活動をおこなう。93年から続く『危ない大学・消える大学』シリーズのほか、『この会社が危ない』『この会社が勝つ』『就職でトクする大学・損する大学ランキング』各シリーズ(共にエール出版社)など著書は100冊を超える。

Twitter:@simanokiyosi

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