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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

3分診療で鬱診断→向精神薬の強烈な副作用で“絶望の淵”をさまよった2年間

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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成功体験を重ねる

 目標を持ったことで、より強く薬には頼りたくないと考えた根本氏。しかし、回復にはそれなりに時間を要したという。

「最初に心が疲れてから約2年間後に、ようやく解決できるようなきっかけがありました。それは、自分がやりたかったビジネスモデルを思いついたことでした。そして、それを思いついてから2週間後に起業しました」(同)

 起業し、多くの人と会うなかで、本来の自分を取り戻していった。

「起業することにより、少しアウトプットができるパワーを取り戻し始めたので、あえて鬱のときに不安現象が起こった場所で人と会って、今に意識を集中して『もう不安現象は起こらない』という成功体験を積み重ねることにより、回復しました」(同)

 現在、大人の引きこもりが大きな社会問題になっているが、解決には周りの理解が大切だという。

「心が疲れているときは、心の整理がついておらず、うまく自分の言葉で表現がしにくい状況になっています。また人の話を聞いても理解しにくい状態になっています。頭ごなしに指示したり知識をインプットさせるのではなく、その方が頭の中で整理がついていないことをアウトプットして整理できるように話を聞いてあげることが強いサポートになると思います」(同)

人のために行動する喜び

 鬱、薬の副作用を乗り越え起業した・ワンズベストの代表取締役として活躍を続け、今年13期目を迎えた。鬱を経験したことは、その後に生かされているという。

「これは私の考えですが、薬を飲むことはおススメしません。私もあのまま薬を飲み続けていたら、今の自分はいないと思っています。薬を飲んでいる時、一時的な高揚感はあったとしても、その後の嫌悪感やだるさ、眠気、気持ち悪さを続けていたら、治るものも治る気がしません」(同)

 根本氏は、自身の経験を社員育成にも役立てている。

「よく社員にも話すことですが、心が疲れることは誰にでも起こります。その心の疲れはピンチかもしれませんが、自分の心の声と向き合うことで自分らしさに気づくチャンスなんです。その自分らしさに気づくことが、改善の第一歩につながると思っています。既成概念にとらわれず、自分らしい人生を歩むことが大事だと思います」(同)

 今回、話を聞いた2人に共通することは、3点ある。鬱という診断に関する医師への不審、医師の診断と自身の状態のギャップに気づき薬を飲まない選択をしたこと、そして回復過程において自身のことだけでなく「人のために行動する」という喜びに気づいたことである。人のために何かできるということは、前向きな気持ちになるために大きな役割を持つといわれる。

 医師の診断は絶対ではないし、向精神薬を不適切に服用することは、依存や副作用など身体に負担をかける結果となることを知っていただきたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

3分診療で鬱診断→向精神薬の強烈な副作用で“絶望の淵”をさまよった2年間の画像1吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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