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課題は、下流老人の年金対策
そもそも、単身世帯が増えてきている今、なぜ会社員の夫と専業主婦の妻というパターンのみをモデルケースにするのだろうか。現時点においても、国民年金のみを受給する夫婦の年金額は、前述のモデルケースの約半分になる。しかも、遺族年金のない国民年金では、どちらかが亡くなると、さらに半額になり、1人では生活は立ち行かなくなる。
前述のマクロ経済スライドの廃止に必要な7兆円の大部分が、実は基礎年金=国民年金だ。財政検証で示したケースⅢでは、2047年度には所得代替率が厚生年金の報酬比例部分では3%しか下がらないのに、基礎年金部分は約3割も下がる。よって、将来的には厚生年金受給者と国民年金受給者の格差がさらに広がることになる。
これでは政府は単に、年金制度という枠組みを安定させるために力を注いでいるだけで、国民の老後の生活を支えるという本来の目的を果たそうとしていないのではないか。
全日本年金者組合では、2015年から国を相手に「年金引き下げ違憲訴訟」を全国規模で展開しており、今もなお続いている。マクロ経済スライドによる年金給付は、憲法で保障している「生存権」や「財産権の保障」などに抵触するという主張だ。国民年金などで爪に火を灯すような生活を強いられている年金生活者にとって、年金額をさらに減らされることは死活問題になるからだ。
もっと声を上げよう
6月3日、「年金だけでは老後資金が2000万円不足する」という金融庁審議会による報告書が公表された。月5.5万円不足するため、30年で計2000万円になるという試算で、資産運用の重要性を強調している。「こういう数字を出したのは初めてです。投資に振り向けさせるのが狙いなんですよ」と、全日本年金者組合東京都本部の田端二三男・副執行委員長は語る。
国は、老後資金づくりの一助としてiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)を奨励する。しかし、同本部の芝宮忠美・副執行委員長は、「『iDeCoで投資したのに、元本割れしてしまった』という相談が相次いでいる。ここ最近で、3倍ほどに増えた印象です」と語る。筆者はNISA枠で購入した3社の株を持っているが、どれもマイナスの状態に陥っている。