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垣田達哉「もうダマされない」

台風19号報道で、なぜNHKは民放に圧勝したのか…縦と横の連携に“雲泥の差”

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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 しかも、平日毎日放送されるワイドショーやニュース番組でも、統括プロデューサーは同じでも、ディレクター以下の現場スタッフは曜日ごとの担当になっているケースが多い。曜日をまたいで番組全体の管理は統括プロデューサーが行っていたとしても、現場スタッフは担当曜日が違えばつながりは薄い。

 災害時に土日に無理やりスタッフを集めても、開けて月曜、火曜の番組がつくれなくなる。地方局はもっと台所事情が苦しいので、スタッフも非常に少ない。全国の都道府県に地方局やスタッフが常駐しているNHKと比べれば、どんな番組をつくっても見劣りはする。

 人・物・金が少ない民放各局は、災害であっても現地に出向くアナウンサーや記者を限定せざるを得ない。そのため、どうしても現地レポートが少なく、スタジオ展開が異常に長くなる。視聴者はスタジオトークではなく、「災害現場が今どうなっているのか」を観たい。 これは、災害時だけではない。民放は自前では2~3カ所しか現地レポートができないので、視聴者提供の映像を多用する傾向が強い。アナウンサーが少ないため、記者やレポーターにコーナー司会をさせている番組もある。記者自身が現地で取材をして、その報告をするのならわかるが、スタッフがつくった台本を読んでいるだけの記者やレポーターもいる。いくら「人手がない、カメラなどの機材や専門スタッフが限られている、予算も少ない」といっても、足で稼ぐことをしないで机の上だけでつくる報道番組は、いかにも情けない。しかし、これが民放各局の現状である。

 だから、ワイドショーでは、過去の事象の一部分を掘り下げるつくり方をするしかないのだ。それもNHKと差別化するには非常に有効な手段だが、特に災害報道の場合、視聴者は「今、どうなっているのか」「これからどうなるのか」が知りたい。

長時間の報道番組ができない理由

 もうひとつ、民放がNHKと比べて決定的に見劣りするのが、長時間の報道番組ができないことだ。その理由は、アナウンサーも記者もディレクターも、ほとんどすべてのスタッフが番組専任になっていることだ。局のアナウンサーであっても、自分のレギュラーの番組以外に出演することは少ない。

 掛け持ちでいくつかの番組を担当しているアナウンサーもいるが、災害の現地に出向いて番組を横断して取材・出演するケースは少ない。今回の台風報道で、番組横断的に出演していたアナウンサーもいたが、それは例外といっていいし、ほんの一時の出演にしかすぎない。

 台風やゲリラ豪雨、豪雪などの災害が頻繁に起きている現状を考えれば、民放各局も「今を伝える、すぐ先はどうなるかを伝える番組づくり」をするべきだろう。そのためにはコメンテーターの数を減らしてでも、現地に出向くことができ、番組横断的に出演することができる自社のアナウンサーや記者を増やすべきだ。そして全国の系列局と連携を図れるような体制づくりも必要だ。民放が制作する本来の報道番組も観てみたい。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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