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法社会学者・河合幹雄の「法“痴”国家ニッポン」第14回

「天皇即位時に罪人が減刑される悪しき制度」という誤解…恩赦という“救済装置”を考える

法社会学者・河合幹雄
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「天皇の代替わり時に罪人が減刑される悪しき制度」という誤解

 以上の解説で、恩赦という制度には現代社会においても意義と役割があることをご理解いただけたと思います。ただ、中にはこんな疑問を抱いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。つまり、ここまで本稿で述べてきた「恩赦」と、今巷で批判を浴びている「恩赦」――天皇の代替わりを機に多数の者を対象として一斉に実施される「恩赦」――とは、まったくの別ものではないか、と。

 そう、まさにそこが問題なのです。これまでの説明ではあえて触れませんでしたが、実は、恩赦には大別してふたつの種類があるのです。ひとつは「政令恩赦」。つまり、政令によって対象となる罪状および国の慶弔事などに合わせた基準日を決め、該当者すべてに対して一律に行われる、すなわち2019年10月に実施されたものです。そしてもうひとつが「個別恩赦」。法務省に設置されている中央更生保護審査会が、特定の者について更生の度合いなどを個別に審査した上で行われるものです。

 本来、このふたつは分けて論じなければならないほど、性質や機能の異なるものです。ところが、メディアではそこの詳しい説明がなされないことが多い。そのため国民の多くは、「恩赦=国の慶弔事に行われる政令恩赦」と誤認し、意図せずに恩赦という制度全体を批判してしまっている、という状況になっています。

 そこで次回は、恩赦制度のもう少し具体的な内容に踏み込み、「政令恩赦」「個別恩赦」、それぞれの機能や実効性について解説していきたいと思います。

(構成=松島 拡)

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●河合幹雄(かわい・みきお)
1960年生まれ。桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)。京都大学大学院法学研究科博士課程修了。社会学の理論を柱に、比較法学的な実証研究、理論的考察を行う。著作に、『日本の殺人』(ちくま新書、2009年)や、「治安悪化」が誤りであることを指摘して話題となった『安全神話崩壊のパラドックス』(岩波書店、2004年)などがある。twitter:@gandalfMikio

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