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中国、粗悪な違法鋼材「地条鋼」の生産激増…日本企業に大打撃

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 中国の競合メーカーの製品よりも耐久性が高いことを強みとしてきた東海カーボンは、急速な事業環境の変化に直面していると考えるべきだ。その上、同社は中国企業の技術面のキャッチアップにも対応しなければならない。これは、多くの業種において日本の企業に共通する課題だ。

悪化懸念高まる事業環境

 中国の需要落ち込みを受けて、東海カーボンは収益を安定させつつ、財務面などのリスクを適切に管理していかなければならない。

 東海カーボンの経営陣は、黒鉛電極事業への依存という偏りを修正するために、改革を重視している。同社は黒鉛電極の生産削減に加え、原価引き下げにも取り組んでいる。経営陣は、ブームというべき一時的な相場高騰に浸ることなく、事業環境を冷静に把握しているといってよいだろう。

 一方、東海カーボンは、海外企業の買収を通した収益源の多角化にも取り組んでいる。すでに同社はドイツなどで買収を行い、アルミ精錬分野等の生産能力を付加した。これも事業構造の偏りを修正するためには重要だ。

 ただ、買収にはリスクが伴う。東海カーボンのように企業向けに素材や部材を納入する企業の業績は、マクロ経済の変化に大きく影響される。経済の専門家の間では今後2年程度で米国経済が景気後退局面を迎えるとの警戒感も増えている。

 一方、世界的に株式や不動産などを中心に、資産の価格は高値圏で推移している。米国の景気後退が現実のものとなれば、米中を中心に世界の自動車販売は一段と落ち込むだろう。その場合、東海カーボンが収益源の分散のために進めてきたカーボンブラック事業やアルミ精錬関連事業は、一段の、あるいは想定外の需要低下に直面し、損失が発生する可能性も排除できない。

 東海カーボンに求められることは、構造改革を進め、米国や中国経済の変調などに起因するリスクを吸収できる事業体制を整えることだ。その2つの点から、今後の業績が評価されていく必要がある。

 口で言うほど容易なことではないが、需要の落ち込み以上の原価低減が実現できれば、同社が技術面の優位性を維持しつつ、収益を得ていくことはできるだろう。不確実性高まるなかで東海カーボンがどう収益を安定させることができるかは、海外需要を取り込んできた日本企業にとっても重要な意味を持つと考える。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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