そのもっとも大きな要因は、経済の低迷だ。韓国では若年層の雇用状況が悪化の一途をたどっている。韓国統計庁によると、2018年の失業率は3.8%だが、青年失業率は9.5%とされている。だが、就業者のなかでも非正規雇用で働く人も多く、実際には青年層の失業率は20%前後ではないかとの試算もある。

 そんななかで、今年の非正規職労働者が748万人1000人に上り、史上最大規模に増えたことがわかった。政府は、統計調査方式が変わって、従来含まれていなかった期間制労働者が加わったことで数値が大きく増えたと釈明したが、81万人の雇用創出や最低賃金の引き上げなど経済の活性化を公約に掲げてきた文大統領の政策が実を結んでいないことは明らかだ。「2019年8月の労働形態別付加調査結果」によると、全体賃金労働者は2055万9000人であり、非正規雇用者は36.4%に上る。現在仕事に就いていない人なども含めた「労働力人口」は2018年時点で2774万8000人だが、正規労働者は昨年の1343万1000人から今年8月には1307万8000人まで減少した。

 韓国のGDPは18年時点で世界10位だが、そのうちの44%を10社の大企業で占めるという特殊な経済状況だ。そのため、若者は大企業への就職のみを追い求めるようになっている。大企業への就職がかなわなければ、あえて非正規雇用の道を選ぶ若者もいる。

 そんななかで、国内3位の売り上げを誇るLGエレクトロニクス(旧LG電子)に暗雲が立ち込め始めた。グループ企業のLGディスプレイが、LCDテレビパネルの価格下落などで累積赤字が1兆ウォン(約9000億円)に上ったことが明らかになったのだ。

 中国の安価なLCDパネルなどが台頭し、前年対比売上が5%減少、営業利益は赤字に転落した。LGディスプレイは、国内生産職社員の希望退職などコスト削減を進めてきたが、「今年の営業赤字は1兆5910億ウォンと創業以来最悪の実績を記録する」と見込んでいる。

 韓国GDPの2割弱を占める国内最大企業であるサムスングループも、半導体の不振などで苦境に立っている。主力のサムスン電子が10月31日に発表した7~9月期の連結決算は、営業利益は前年同期比55.7%減の7兆7800億ウォン(約7200億円)と大幅減益。スマートフォン需要の回復などで後半期は業績を伸ばすのではないかとの見方も広がっているが、韓国全体に閉塞感が漂っており、文政権は難しい舵取りを迫られているのだ。

 そんな社会情勢を背景に、米国からの圧力も受け、日韓関係の改善に向けて動き始めたわけだ。だが、道のりは険しいと言わざるを得ない。
(文=姜英順/ジャーナリスト)

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