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非情な株買い占め劇…ぺんてる、突如、コクヨの軍門に下る 文具業界に熾烈なPK戦争

文=編集部
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 堀江は12年5月23日の取締役会で定年(62歳)を過ぎた役員4人の退任を求める予定だった。ところが、ここ数年の業績不振に対する経営責任を取れということで、緊急の社長解任動議が出され可決された。切る側が逆に切られたわけだ。海外で豪遊を繰り返すなどの御曹司の道楽に、古参の役員たちの堪忍袋の緒が切れた。生産畑出身の和田優氏が社長に就いた。堀江氏は家族と合わせてぺんてる株37.45%を保有する筆頭株主。社長復帰を目指していたが、本人以外の堀江一族の支持が得られなかった。

 返り咲きを諦めた堀江氏は、未公開株を中心に投資を行うマーキュリアインベスメントに持ち株を売ることにした。マーキュリアは17年12月、堀江氏の持ち株の受け皿ととなるファンドを組成。18年3月、傘下のファンドが、創業家の堀江氏からぺんてる株を取得した。金額は70億円程度とみられている。

 堀江氏は18年2月、ぺんてる株を売却した資金を元手にラーテルハートを設立。消費財の新製品開発を行う企業への投資事業を始めた。マーキュリアは引き取ったぺんてる株をコクヨに売り渡す仲介役を果たした。ぺんてるは文具大手のプラス(非上場)との経営統合を希望していたとされる。マーキュリアがプラスを蹴って、コクヨに持ち株譲渡したことが、ぺんてるとコクヨの関係がこじれる原因となった。コクヨが買収すれば、マーキュリアと人脈でつながっている創業家の堀江氏が復活するのではないか、との疑念も、ぺんてるの現経営陣にはあったようだ。

コクヨの狙いはプラス封じだった?

 ぺんてるの19年3月期の連結売上高は403億円。欧米やアジアなど海外約20カ所に販売拠点を持ち、海外売上比率は65.8%。海外が主力である。だが、近年は大ヒット商品に恵まれず国内事業が苦戦し、減収減益が続く。

 一方、コクヨの19年12月期の連結売上高は3220億円の見込み。同じく国内市場の縮小に悩むコクヨは、1割にも満たない海外売上高比率の底上げを目指している。ノートが強みのコクヨと、ペンが主力のぺんてるとは、製品の重複も少ない。ぺんてるが持つ海外の販路を活用して、アジア市場での成長を目指す狙いがある。

 別の見方がある。総合文具メーカー第2位のプラスは、首位のコクヨが得意とするノート分野を含めて買収を重ねてきた。両社のその攻防は「PK戦争」と呼ばれるほど激しい。コクヨがぺんてるの筆頭株主になったのは、「プラスとぺんてるの連携を阻止し、国内市場を死守する狙いが大きい」(小売業界担当のアナリスト)との見方が台頭している。ぺんてる株のプラスへの売却阻止で一致したコクヨとマーキュリアが手を組んだことにより、今回のM&Aは成立したといえる。

 ぺんてるはコクヨの軍門に降った。ぺんてるは経営の独立性を保つことができるのだろうか。

(文=編集部)

【続報】

 コクヨは11月15日、ぺんてるを子会社にするため、敵対的買収に踏み切ると発表した。ぺんてるは非上場会社。同社OBや取引先など複数の株主に直接、株の買い取りを打診する。12月15日まで1株3500円で取得し、議決権比率を37.80%から50%超に引き上げる。50.1%分を保有できた場合、買収金額は38億4200万円になる。

 コクヨは5月に株式を取得した後に、ぺんてると提携協議を進めてきたが、膠着状態に陥っていた。経営権を握り事態を打開したい考えだ。コクヨの黒田英邦社長は同日開いた記者会見で、敵対的買収に踏み切った理由についてこう述べた。

「10月に差出人不明の文書が当社に届いた。第三者との資本提携に関する具体的な内容が書かれていた。ぺんてるの経営陣に真偽の確認を求めたが、明確に否定しなかった。提携協議を進めていたのに、裏切り行為だ」

 第三者とは文具大手プラスのこと。ぺんてるの経営陣が当初から望んでいたのはプラスとの経営統合だった。コクヨはプラスに先を越される前に子会社化を決断したということだ。

 対するぺんてるは15日夜、「コクヨの一方的かつ強圧的な当社の子会社化方針に強く抗議する」とのコメントをホームページ上に掲載した。「当社とコクヨとの間に他社との協業を制限する合意は存在しない」「様々な企業との協業・提携の検討を行うは、当社の発展のために必要なことであり、当社が自主的な判断をもって行うべきものだ」とし、“裏切り行為”とした黒田社長の批判に猛反発した。

 今後の焦点はコクヨが実際に50%超の議決権比率を確保できるかにかかっている。非上場企業のぺんてるは、自社の株式に、取締役会の承認がなければ譲渡できない「制限条項」を付けており、今回の買い増しは認められないとしている。そのためコクヨはまず株主から株主総会の委任状を手に入れ、臨時株主総会を招集。議決権の過半を得る考え。成功すれば取締役を交代させて買い増しを実現させることができる。

 ぺんてるにはOBや取引先など数百人の株主がいる。高齢化したOB株主にとって、1株3500円の買い取り価格は、現金化できるラストチャンスになるかもしれない。すべてはOB株主の出方にかかっている。もし、コクヨが過半数の株式を取得しても、いったんこじれた関係を修復するのは、買収するよりも難しいのではなかろうか。プラスは「本日(11月15日)時点ではコメントを控える」としている。

BusinessJournal編集部

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