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バスケもW杯出場!Bリーグ人気“急過熱”…DeNA参入、観客動員259万人達成

取材・文=武松佑季

最終目標は川崎の街から日本のバスケ文化を変える

 ブレイブサンダースは、昨年の開幕節では無料で限定ユニフォームを配布するなど、数々の改革が功を奏し、DeNAの運営初年度のチケット売上高も前シーズン比160%、土日祝日に開催されたとどろきアリーナでの試合はすべて満員御礼だった。ビールも昨シーズンの開幕戦だけで1カ月分が売り切れてしまうなど、グッズや飲食売上高は前シーズン比でなんと300%と大きく業績を伸ばした。しかし、それでも黒字転換には至っていないという。初期設備投資によるコストを見込んで、もともと赤字予算を組んでいたとはいえ、やはり黒字化のハードルは高い。今後、元沢社長はどのようなビジョンを描いているのか。

――黒字転換させるために、もっとも重要なポイントはどこにあるとお考えですか?

元沢 やはり平日の入場者数でしょう。休日は満員になりますが、平日に足を運んでもらうには、もっともっとブレイブサンダースを知ってもらって、「観に行ってみようかな」という気持ちになってもらわなくてはなりません。そのため、今シーズンの開幕前は、とどろきアリーナ最寄りの武蔵小杉駅を、選手がポテトチップスを配りながら歩き、グランツリー武蔵小杉というショッピングモールで出陣式を大々的に行って街の人にアピールしました。

――ポテトチップスは特別仕様ですか?

元沢 そうです。ただのチラシではなかなか受け取ってもらえませんから、試合会場でのみ販売しているブレイブサンダースオリジナルのものを配布しました。あとは、今シーズンから東急・武蔵小杉駅改札内でJリーグの川崎フロンターレさんと半々で駅を装飾したり、川崎市バスとのコラボレーションでブレイブサンダースのラッピングバスも運行しています。

――お金がかかりそうですね。

元沢 これらを広告として出すと、とんでもない金額になってしまいますから、使っていない場所をお借りするというかたちです。ベイスターズに比べて予算が少なく、こういった面は地域の方々のご協力が必要不可欠です。そして協力してもらうには、クラブの存在を認めてもらわなくではいけません。ですから私自身、工場協会や法人会などの会合には顔を出しますし、地元のロータリークラブに入ったり、あとはスタッフが地元のお祭りの手伝いをしたり、草の根的に川崎の街と一体となる努力はずっとしてきました。

――企画の面では、今シーズンは漫画『あひるの空』(講談社)や、ARダンスボーカルユニット「ARP」とのコラボも打ち出していますね。

元沢 『あひるの空』は武蔵小杉を舞台としたバスケ漫画なので、自然な流れでコラボさせていただくことになりました。ARPの場合は、バックで支える技術がすごくて、これを生かした演出をできればブレイブサンダースファンにも喜んでもらえるんじゃないかということでコラボを打診し、実現しました。私たちだけでできることは限られているので、外部のトップクリエイターと一緒に新しいエンターテインメントをつくっていくのも方針のひとつです。今シーズンはほかにも、吉本興業さんやスタジオ地図さんともコラボさせていただきます。

『あひるの空』とのコラボ企画
『あひるの空』とのコラボ企画

――ここまでとても順風満帆に思えます。

元沢 いえ、そんなことはなくて、苦労や洗礼を受けたところもたくさんあります。たとえば、Bリーグは試合中もクラブ側が音楽を流して応援をリードしていいのですが、昨年の開幕戦はいろいろと音楽を入れすぎて、試合後のアンケートでは「ノリづらい」という多数のご意見を頂きました。バスケ独自のポイントを理解しきれず、(東芝運営時代から)変えすぎてしまった部分もあったので、数千通のアンケートすべてに目を通して、選手も集めて緊急ミーティングをして、変えられるところは変える、その繰り返しです。

――新規参入だからこそ、昔からのファンの意見は大事にすべきなんですね。そうすることでクラブの収益もどんどんと伸びていくということでしょうか。

元沢 もちろん私はそこを気にしますが、収益や観客動員は最終的についてくるものであって、スタッフには「どうやったらお客さんに楽しんでもらえるか」という顧客満足の部分だけを意識してもらうようにしています。1、2年目は事業基盤をしっかりさせるための投資期間で、この時期に数字ばかり追ってしまうとスポーツビジネスはうまくいかないですから。

――ということは、本当の意味で成果が出るのは来年以降ということですね。

元沢 現状でも、赤字とはいえリーグのなかでは営業収入は上位にランクインしています。ただ、気取ったことを言ってしまうようですが、他チームよりも事業面で抜きん出ることが目標ではないんです。今は川崎の人たちの日々の会話にまだまだブレイブサンダースは出てこないし、日本人の会話のなかにバスケが出てくることも多くありません。これって、文化的なインフラがまだまだ整ってないということなんです。ですから、これからどんどんマーケット規模を広げて、プロスポーツとしてのバスケットボールのステータスを上げるのが本当の目標です。

――確かに、部活においてのバスケは人気競技ですが、現状はそれ止まりというイメージです。

元沢 そうなんです。だから我々は「MAKE THE FUTURE OF BASKETBALL ~川崎からバスケの未来を~」というミッションを掲げています。ブレイブサンダースを通して川崎だけでなく、誰もがバスケットボールを身近に感じられる未来をつくりたいと、真剣に考えているんです。

 近い将来に自前の新アリーナを建設する構想も発表するなど、破竹の勢いで改革を進める川崎ブレイブサンダースは、今季でクラブ創設70周年。元沢社長は、今シーズンを「次の100周年を目指すために、川崎の良いところをクラブを通じて発信していきたい」と語る。今後もさまざまな企画が打ち出されるという。ブレイブサンダースが川崎を、そしてプロバスケの未来をどう変えていくのか、期待をもって見守りたい。そして、実際にとどろきアリーナに足を運んで、その歴史の見届け人となるのもいいかもしれない。
(取材・文=武松佑季)

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