NEW
湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

半導体装置市場、報じられない地殻変動…カギ握る台湾TSMCの動向、中国市場の挙動不審

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 韓国の露光装置市場の挙動とメモリ市場の好不況の動向が一致することから、露光装置市場は、DRAMやNAND等のメモリ市場の動向に大きく左右されるといえる。上記を頭に入れて再度、図2を見ると、韓国市場ほどの派手さはないが、メモリを製造しているマイクロンやインテルがある米国や、キオクシア(旧東芝メモリ)がある日本も、2016年から2018年にかけて露光装置市場が増大し、2019年に減少していることが見てとれる。やはり、メモリ市場の好不況と露光装置市場の間には相関があるといえよう。

 一方、半導体製造専門ファンドリーのチャンピオン、TSMCがある台湾の露光装置市場は、韓国市場などとは異なる動向を示している。メモリ市場が成長する2016年から2018年にかけて台湾の露光装置市場は縮小するが、メモリ市場が不況になる2019年に逆に増大しているのである。

 まず、2018年にかけて台湾市場が縮小する原因としては、アップルのiPhoneの販売が不調だったこと、仮想通貨のマイニング市場が壊滅的になったことなどが考えられる。TSMCは、iPhone用およびマイニングマシン用プロセッサの製造委託を大きなビジネスとしていたからだ。

 ところが、2018年から2019年にかけて、他国の露光装置市場がすべて低迷するなか、台湾市場だけが上向く。これは、TSMCが1台約200憶円もする最先端露光装置EUVを大量に導入したことによる。2019年には、TSMCが18台、サムスン電子が8台、インテルが4台のEUVを導入した模様だ(図3)。

 しかし、EUVを使いこなすのは非常に難しく、相当大規模な練習が必要である。TSMCは2018年に、EUV用に毎月3~4万枚のシリコンウエハを流し、すべてスクラップにしたという。今後、最先端の露光装置の主役はEUVに代わっていくが、それを実現できるのは、当面TSMC一社のみであろう。

挙動不審な中国の露光装置市場

 中国の露光装置市場の挙動は、これまで見てきた韓国とも台湾とも異なる。中国市場は2012年から2018年にかけて、ほぼ直線的に成長する。これは、習近平国家主席が国家政策「中国製造2025」を掲げ、たった15%しかない半導体の自給率を大幅に増大させるため、巨大メモリ工場を多数つくり始めたことに起因する。半導体工場を建設すれば、次は露光装置など半導体製造装置を相当台数導入することになるからだ。

 そのかいあって、中国の露光装置市場は2018年に、台湾市場に追いつくほど成長する。しかし、中国が導入した露光装置の多くが休眠していると思われる。というのは、中国の半導体出荷額は台湾に遠く及ばず、したがって半導体自給率も一向に向上しないからだ。

 さらに中国の露光装置市場は2019年に縮小する。これは、中国のDRAMメーカーのJHICCに対して、米国が製造装置の輸出を禁じたため、DRAM工場の建設が困難になったことに起因する。

 以上、地域別の露光装置市場を分析した。露光装置市場から、各国の半導体市場動向をおおよそ読み取ることができることがわかった。

再び露光装置市場が1位の座に

 図1に示した通り、2019年に1台200憶円もする最先端露光装置EUVの出荷額が、ArF液浸を上回る見込みである。そのEUVの出荷額と出荷台数は、図3に示した通り、今後も右肩上がりに増大すると予測できる。このEUV市場を牽引するのは、台湾のTSMCである。そして、これに韓国のサムスン電子と米インテルが続く。

 そのTSMCは、2019年の投資額を当初の100億ドルから150億ドルに引き上げたことを発表した(EE Times Japan『TSMC、5G好調で設備投資150億米ドルに引き上げ』、2019年10月24日)。同記事によれば、TSMCは、「2020年の投資額引き上げも“ほぼ確実”」であるという。何しろEUVの装置価格は1台200憶円もする。この高価なEUVをTSMCが大量に導入し続ければ、露光装置市場は2020年にもドライエッチング装置市場を抜いて、1位の座に返り咲くであろう。

(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)

半導体装置市場、報じられない地殻変動…カギ握る台湾TSMCの動向、中国市場の挙動不審のページです。ビジネスジャーナルは、連載、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!

関連記事

BJ おすすめ記事