アパレル各社の打開策はEC

 このように各社厳しい状況が続いているが、当然、それぞれに対策は打ってきている。

 三陽商会はEC(電子商取引)販売に力を入れることで、事態の打開を図ろうとしている。18年4月にネット通販を支援するルビー・グループを買収。同社のノウハウを活用し、「ラブレス」や「エポカ」「マッキントッシュ ロンドン」などの単独通販サイトを立ち上げた。

 同社のEC強化は緒に就いたばかりだが、それなりの成果は出せている。19年1~6月期のEC売上高は、前年同期比35%増の34億円と大きく伸びた。増加額は9億円だが、百貨店向け売上高の減少額6億円を上回ったのだ。また、EC売上高が全体に占める割合は12%となっており、ECの存在感は高まっている。

 同社初となるオーダースーツブランドも新たに立ち上げた。新ブランド名は「ストーリーアンドザ スタディー」で、紳士用と婦人用の両方を扱う。9月に東京・銀座で第1号店をオープンした。

 同ブランドは東京大学発のスタートアップ、サピートの3D解析技術を使う。立体的に解析することで、顧客の体形や姿勢に合ったスーツを仕立てる。2着目以降は通販サイトでも購入可能だ。商品は注文から最短2週間で引き渡す。

 オンワードHDもECの強化で巻き返しを図っている。19年3~8月期のEC売上高は前期比34%増の153億円と、大きく伸びた。

 同社はグループのECサイト「オンワード・クローゼット」が大きな貢献を果たしている。アクセス数と購入者数は大きく伸びており、19年2月期はどちらも前期から35%増えた。また、自社サイトの会員数が30%増の265万人まで拡大している。

 オンワードHDはオーダースーツにも力を入れている。17年10月から販売を始めた「カシヤマ ザ・スマートテーラー」は、店で採寸して注文すると最短1週間でスーツが届く。2着目以降は店に行かなくても、採寸した体形データを基にサイト上で注文することができる。業界全体でスーツ需要は低迷しているが、1着は良いスーツを持ちたいという需要の高まりで同サービスは人気が高まっている。

 レナウンはEC強化が課題だ。19年1~6月期のEC売上高は6億円だったが、全体に占める割合は3%程度にすぎず、前年同期からの伸び率は11%と物足りない。同業他社と比べるとECの弱さが際立っている。

 そうしたなか、同社は9月にネット通販限定の女性向けブランド「エンスウィート ルミエール」を立ち上げた。3000円台のニットを扱うなど低価格が特徴で、従来の百貨店向けとは一線を画す。同社はEC販売の割合を現在の3%から23年までに10%に拡大させる目標を掲げているが、同ブランドをテコに目標を実現したい考えだ。

 百貨店向けアパレルを主力とする企業の事態打開策として共通しているのが、「ECの強化」だ。言うまでもなく、ECで衣料品を買う消費者は増えており、ECの早急な整備・充実が求められている。各社とも、まずはECを強化することで販売を上向かせたい考えだ。

 もっとも、それだけでは不十分で、オーダースーツを手がけるなどプラスアルファの施策も欠かせない。いずれにせよ、百貨店という業態が斜陽となっているなか、新たな販路を開拓するなど抜本的な対策を講じられるかが問われている。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。 

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