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五輪マラソン移転で露呈、IOCの“マネーファースト”…開催地を国別の立候補にしない事情

写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト
五輪マラソン移転で露呈、IOCの“マネーファースト”…開催地を国別の立候補にしない事情の画像1
10月30日から開かれた東京でのIOC調整委員会

負け犬の遠吠え

 札幌に決定した東京五輪のマラソンと競歩。11月5日に会見を行った日本陸上競技連盟強化委員会の麻場一徳強化委員長は、「あってはならない決定」とし、河野匡長距離・マラソンディレクターは「IOCは非常に高圧的。理解不能な移転。私はこのことについては、たぶん死ぬまで心から消え去ることはない」と怒っていた。山下佐知子女子マラソン五輪強化コーチも「アスリートを馬鹿にすんなと思う」と啖呵を切った。瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは「3年間、東京を目指してやってきた。急に札幌と言われても」と話す一方、「駄目といえば、五輪からマラソンをなくすということになるという思いがあった」と吐露した。

 こんな会見をするなら、なぜIOCのJ・コーツ調整委員長の滞在中にしないのか。陸連は談判を申し入れることも抗議もしていない。「敵」が消えてから吠えている。

 陸連内の意思疎通も滅茶苦茶のようだ。河野氏はIOC調整委員会に提出するために、選手や監督、コーチなど現場の意見を集めたという。しかし、風間明事務局長は「調整委に出すためとは思わなかった」と、集めた意見をIOCに提出していなかったことを明かした。陸連への批判をかわそうとして開いた、空しい会見となった。

 降ってわいた移転騒動に、選手や監督たちも神経質だ。五輪代表に内定した選手を指導するある監督も、札幌案に当初は「今さらという感じ」と批判的だったが、筆者の取材に「決められた所に合わせて調整してゆく」と発言変更した。

「札幌ありき」の茶番劇

 筆者は10月30日から開かれた東京でのIOC調整委員会を取材した。初日、コーツ委員長に続く挨拶で森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長と橋本聖子五輪担当相は日本語で話したが、小池百合子都知事は英語で話して自分で訳すという「通訳無視」を行った。森氏は長々とラグビーの話をした。皮肉っぽく「ワンチーム」を強調した小池氏には、IOCの決定よりも森氏が先に札幌案を知っていたことが不快だった。経緯は略すが、小池知事と森氏は政治家として「犬猿の仲」だ。小池知事が札幌案を知ったのはIOC発表前日の10月15日、森氏は7日だったとみられる。橋本大臣も小池知事より早く知った。「『小池知事に早く教えればマスコミを使って猛反対され、難しくなる』と森氏がIOC側に示唆し、小池知事が蚊帳の外にされたようだ。

 調整委でコーツ委員長は冒頭から「札幌に決定した」と発言、小池氏は終了後に「デシジョン(決定)とおっしゃったが」と反論した。この前日、「都民ファーストの会」の都議2人が特派員協会で会見をし、「ドーハの世界選手権の大量棄権は選手の準備不足」「朝5時スタートなら問題はない」と東京開催を訴えた。参加した筆者は「なぜ、代表選手を選考するMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)を最も暑い時季にしなかったのか?」と訊ねた。都議は「選手たちは一番暑い時季にやってほしいという声が強かった。9月15日になったのは政治的理由です」と答えた。

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