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五輪マラソン移転で露呈、IOCの“マネーファースト”…開催地を国別の立候補にしない事情

写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト

五輪マラソン移転で露呈、IOCの“マネーファースト”…開催地を国別の立候補にしない事情の画像2

「すでに行事で土日祝祭日は埋まっていた」(スポーツ紙記者)そうだが、MGCは朝スタートしている。どうしても9月15日なら、日中に実施すれば8月初旬の朝に近い温度になるはずだ。酷暑時季に開催してドーハと同じ事態になれば、すべてが終わることを恐れたのでは。

 さて、来年の知事戦を控える小池氏は、札幌案に「はい」とはいえない。一方、森氏はすでに代議士を引退し、北海道出身の橋本氏は口にこそしないが札幌への移転は大歓迎だろう。だが「合意なき決定」と英国のEU離脱騒動をもじった言葉を発した小池氏は早々にコーツ氏に「札幌で了承」と伝え、抵抗しているポーズを取っただけだ。それが証拠に2日目にはさっさと晩餐会を開いている。決裂するかもしれない真剣勝負なら、宴会の予約はできまい。 

 最終日は取材者にオープンにしたが、1時間ほどのシャンシャン。コーツ委員長と森氏による記者会見で司会者は、記者が名札を付けているわけでもないのに「はい、●●さん」と名を呼んで指名していた。「安全牌」たる懇意の記者しか選ばない「出来レース」だった。

 1984年のロス五輪では酷暑でふらふらになって完走したスイスのG・アンデルセン選手が称賛されたが、ドクターストップをかけるべき危険状態だった。あのようになる前にもストップをかけられる体制が東京五輪でできているのか。そんなことも検討された様子はない。「初めに札幌ありき」だった。

巧みなIOCの4つの決定事項

 最終日には4つの「決定事項」が配られ、コーツ氏が形だけ是非を問うた。

(1)決定権はIOCにある

(2)札幌移転にかかる費用は東京都に負担させない

(3)すでに使った費用のうちで別の用途に使えないものは、東京都には負担させない

(4)マラソンと競歩以外の競技の移転はしない。

(1)は「何を騒いでるんだ。わかってないのか」と言わんばかり。(2)と(3)は小池知事の「都民の税金を他都市へ使いません」という発言を意識したもので、巧みだ。費用をIOCが持つとは言ってない。(3)については、「パラリンピックに使う」とか「ミスト(霧)や遮蔽熱歩道で都民も涼しくなる」などとしてしまえる。

(2)  意見を聞かれた山下泰裕JOC会長の発言なども、毒にも薬にもならない。IOCに東京を選んでもらったJOCが、物申せるはずもなかろう。前会長の竹田恒和氏をめぐる誘致合戦中のIOCへの贈賄疑惑を、フランス検察当局が捜査中だ。「福島第一原発はアンダーコントロール」と主張して立候補してくれた日本は、IOC幹部にとっては「カモ」だった。

 IOCのT・バッハ会長の使命を帯びた「真夏五輪死守」が、コーツ氏来日の最大の目的だった。巨額の放映権料がIOCの主たる収入。秋開催では、米国のスーパーボウルや野球のワールドシリーズと重なるため、五輪の視聴率が落ちる。

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