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アルツハイマー病、治療に向け画期的研究結果…超身近なウイルスが関与か

文=ヘルスプレス編集部
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「Getty Images」より

 米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のジョエル・ダッドリー氏らの研究チームは、「アルツハイマー病の発症に2種類のヒトヘルペスウイルス(HHV)が関与している可能性が高い」とする研究成果を、科学雑誌「Neuron」(6月21日オンライン版)に発表した。

 発表によると、アルツハイマー病患者の脳では、健常者の脳と比べるとヒトヘルペスウイルス6A(HHV-6A)とヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)が約2倍も多く、これらのウイルスは、アルツハイマー病のリスクを高める遺伝子と相互に作用する事実が判明した。

 HHV-6(HHV-6AとHHV-6B)とHHV-7は、ほとんどの人が主に乳幼児期に感染する身近なウイルスで、特にHHV-6は乳児期の突発性発疹の原因となる。

 また、これらのウイルスは単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バー(EB)ウイルスなどのヘルペスウイルスと同様に、感染後に体内で休眠状態となり、ある時点で再活性化しやすい。

 ダッドリー氏によれば、これらのウイルスは特に神経毒性が強く、アルツハイマー病以外のさまざまな神経疾患との関連が認められるが、ウイルスが活性化する機序は未解明だった。

 ダッドリー氏らは、アルツハイマー病患者とアルツハイマー病ではない対象群から死亡後に採取した600以上の脳組織を用いて遺伝子解析を行い、データを比較した。

 その結果、HHV-6AとHHV-7の遺伝子は、アルツハイマー病のリスクを高める遺伝子の活性化あるいは抑制に働き、複雑に相互に影響し合っている可能性があることがわかった。

 さらに、米メイヨー・クリニックとラッシュ・アルツハイマー病センターで採取した約800の脳組織を用いて遺伝子解析を行ったところ、アルツハイマー病患者の脳ではHHV-6AとHHV-7が有意に増加していた。

 ダッドリー氏は「今回の結果は、アルツハイマー病の原因解明につながる可能性がある。免疫系を標的とした新たな治療法の開発に向けた足掛かりとなるだろう」と期待を寄せている。

 米アルツハイマー病協会のキース・ファーゴ氏も「アルツハイマー病に細菌やウイルスが関与する可能性はこれまでにも指摘されてきたが、今回の研究で信頼性が高まった。アルツハイマー病の発症にウイルスが関与しているなら、抗ウイルス療法や免疫療法を新たに開発できるが、さらなる研究が必要だ」と指摘している。

ヘルペスウイルスの感染がアルツハイマー病の真因か?

 この研究で、アルツハイマー病とヒトヘルペスウイルスの活性にはなんらかの関係性があることがわかる。

 アルツハイマー病の病理学的特徴は、アミロイドベータペプチドの繊維化および沈着とされているが、発症機序の論争は続いている。

 2016年にマサチューセッツ総合病院のルドルフ・タンツィ博士とR. D. モイアー博士らの研究チームは、アミロイドベータペプチドが病原性微生物(真菌とバクテリア)の感染に対する自然免疫応答タンパク質であると報告した(Sci Transl Med. 2016 May 25;8(340):340ra72.)。

 一方、18年7月に同研究チームは、マウスとヒト神経細胞においてアミロイドベータペプチドがヘルペスウイルス表面の糖タンパク質に結合すると、アミロイドベータペプチドの蓄積を亢進し、向神経性の単純ヘルペスHSV1およびヒトヘルペスウイルスHHV-6AとHHV-Bに対する抗ウイルス性を発揮すると「Neuron」(18年7月11日オンライン版)に発表した。

 発表によれば、ウイルスが脳におけるアミロイドベータペプチド生成を誘導する機序が明らかになり、ヘルペスウイルスの感染が誘導するアミロイド化がアルツハイマー病の病因機序のひとつであることが示唆された(http://crisp-bio.blog.jp/archives/10597867.html)。

 このような発表に対する国内の医師の反応はどうだろうか。

 宮の森スキンケア診療室(札幌市中央区)は、次のように指摘する。

「加齢により免疫系が衰退するにつれて高齢者の脳内で単純ヘルペスウイルス(HSV-1)が増加し、ストレスやさらなる免疫系の低下によりHSV-1が脳内で再活性化する。その結果、炎症を引き起こし、脳組織に損傷を与え、アミロイドβが蓄積され、アルツハイマー病を発症する。APOE4遺伝子を持つ高齢者は特に発症しやすい。HSV-1を抑える抗ウイルス薬の使用が、難治性のアルツハイマー病の治療や予防になる可能性がある。さらなる研究が待たれる」(https://www.m-skin.com/archives/3957

 また、北品川藤クリニックの石原藤樹院長は、今回の研究を「ヘルペスウイルスの脳への持続感染に伴い、ベータアミロイドの沈着に影響を与える遺伝子の発現などが変化し、認知症の発症につながる可能性が示唆された点に意義がある」と評価している(https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2018-06-27)。

 さて、認知症のなかでもっとも一般的なアルツハイマー型認知症の有病者数は、世界でおよそ4400万人と推計されている。そのうちおよそ550万人が米国の患者とされる。それが高齢化によって2050年までに患者数は3倍に急増するとの予測もある。

 アルツハイマー病の治療薬は5種あるが、いずれも初期症状の改善には効くが、長期にわたって高い効果が得られるかは未確認だ。最後に新薬が承認されてから、すでに15年が経過している。

 今回の研究がアルツハイマー病の治療研究の進展と、抗ウイルス療法や免疫療法の治療法の開発につながることを期待したい。
(文=ヘルスプレス編集部)

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