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ラグビーワールドカップが日本を熱狂させたワケ…むき出しの闘争本能の裏にある規律と品位

文=山川徹
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2019年10月13日、横浜国際総合競技場にて対スコットランド戦に勝利し、初のベスト8進出を決めた日本代表チーム。(写真:AFP/アフロ)

 9月20日に開幕し、11月2日に南アフリカの優勝によって幕を閉じた「ラグビーワールドカップ2019日本大会」。事前の予想を大きく裏切り、関係者も驚くほどの盛り上がりを見せたのはなぜなのか? ラグビー日本代表チームにおいて、海外にルーツを持つ選手を追ったルポ『国境を越えたスクラム ラグビー日本代表になった外国人選手たち』(中央公論新社)の著作があるノンフィクション作家の山川徹氏が、その理由に迫る。

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 ラグビーW杯が終わり、2週間が過ぎた。

 W杯前、日本でこれほどラグビー熱が高まるとは誰が想像しただろうか。

 いまも、ワイドショーやバラエティ番組に日本代表選手たちが出演し、書店には関連する書籍が並び、ネット上でもラグビー関連の記事が日々発信されている。

 ブームのトリガーとなったのは、史上初のベスト8進出を果たした日本代表の躍進に違いない。だが、ラグビーに馴染みが薄かった人たちの心をつかんだのは、日本代表の活躍や激しいプレー、ゲームの面白さだけではなかったように思う。ラグビーというスポーツが培ってきたカルチャーにふれたからこそ、たくさんの人がラグビーの虜になったのだ。

 44日間の開催期間に起きた出来事を振り返ってほしい。日本代表にかかわるものだけでも、こんなエピソードが思い浮かぶ。

被災地でボランティア活動を行ったカナダ代表

 9月20日のロシアとの開幕戦後、日本代表主将のリーチマイケルが、相手チームのロッカールームを訪ねた。日本代表チーム内で決めたロシア代表チームのMVP選手の健闘をたたえ、模造刀を渡すためだった。

 9月28日のアイルランド代表との第2戦。日本代表は、W杯前に世界ランキング1位だったアイルランドを破った。忘れられないのが、試合後のシーンである。

 ノーサイドのホイッスルが響いたあと、アイルランドの選手たちは客席にあいさつすると2列に並んで、ピッチを去ろうとする日本代表を賞賛の拍手で送り出した。死力を尽くしたゲームのあと、敵味方のサイドがなくなり、仲間になる。それが、ラグビーならではのノーサイド精神である。アイルランド代表がノーサイド精神を体現した光景は、ジャイアントキリング以上に、熱戦を見守った世界中の人たちの胸を打った。

 10月5日のサモア戦の前には、サモア代表が公の場ではタトゥーが目立たぬよう長袖のシャツを着用していると報じられた。サモアやトンガなどポリネシアの国々では、タトゥーは家系やルーツを表現する伝統文化である。一方、日本では入れ墨やタトゥーは、反社会組織と結びつけて考えられる。サモア代表は日本の慣習を尊重したのである。

 決勝トーナメント進出を決めた10月13日のスコットランド戦後に記憶に残ったのは、日本代表のトンプソンルークのコメントである。

「台風に比べて、ラグビーは小さいことね。亡くなった人もいる。家がダメージを受けた人は頑張ってください。私たちも頑張るから」

 彼は自分たちの勝利を喜ぶよりも先に、台風19号の被災者を気遣ったのだ。

 また、試合後、観客席に向かってお辞儀する各国代表選手たちや、他国の国家を大声で歌うエスコートキッズの姿も話題になった。

 カナダ代表は、釜石で10月13日に開催予定であったゲームが台風19号の影響で中止になったあと、被災地でボランティア活動を行った。路上に積もった土砂をスコップでかき出す大男たちに、日本中から感謝の声が送られた。一方、カナダの対戦相手だったナミビア代表は、宮古駅でファンとの交流会を行った。岩手の子どもたちにサインを書いたり、記念撮影をしたりして、被災地を元気づけた。ナミビア代表が宮古市に打診し、実現したイベントだった……。

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