じつは、2011年までは小学校の発生件数は高校よりはるかに少なかったのである。2012年から小学校での発生件数が増え始め、ついに2013年に高校を抜き、2015年から年々さらに急増中であり、今や高校の4倍以上となっている。高校の件数を抜いてからわずか4年で4.5倍と大差をつけるほど急増中なのである。
自分の思い通りにならないと、ついカッとなって暴力を振るってしまう。そんな小学生が急増しているのである。それも凄まじい増え方と言わざるを得ない。このような小学生の現状をみれば、子どもたちの衝動コントロール力がいかに低下しているかがわかるだろう。
忍耐力の乏しい子どもたち
衝動コントロールができないのは、忍耐力が乏しいことによる。すぐに我慢できなくなるのだ。このような今の子どもたちの動向をみると、忍耐力を身につけさせるような子育てが行われていないといった問題が浮上してくる。
じつは、子どもたちの忍耐力の欠如というのは、ずいぶん前から指摘され始めていた。だが、「ほめて育てる」「叱らない子育て」を推奨する風潮により、それが修正されることなく、このところよりいっそう忍耐力の欠如が目立つようになっているのである。
大阪市からの依頼で2006年に私が実施した大阪市内の幼稚園教諭を対象とした調査において、「今の子どもや子育て状況を見ていて気になること」について尋ねたものがある。その回答をみると、「今の子どもを見て気になること」の筆頭にあがったのが「忍耐力のない子が目立つ」であった。しかも、64%の教諭がそれが気になると答えており、その比率は他を圧倒している。主な気になる点をあげると、以下のようであった。
「忍耐力のない子が目立つ」 64%
「周りに合わせられない子が目立つ」 52%
「過度に自己中心的な子が目立つ」 47%
「基本的生活習慣の欠如している子が目立つ」 46%
「自発性のない子が目立つ」 45%
「協調性のない子が目立つ」 44%
「友だちとうまく遊べない子が目立つ」 43%
こうした回答をみると、自分の感情や衝動、行動を必要に応じてうまくコントロールするのが苦手な子が多いのが気になるということになる。これはまさに非認知能力の欠如を意味している。