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ドコモショップ、有償化に高齢者排除との批判…モンスター客に丸一日対応で体を壊す店員

文=編集部
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ドコモショップ

 NTTドコモは来月1日から、全国のドコモショップで無料だった各種サービスを有料にする。これまでドコモショップでは、ショップで購入した端末のほか、家電量販店やインターネットで購入した端末でも、ドコモで契約していれば初歩的な使い方やデータ移行、アカウントの設定などを無償でサービスしていた。これらが、ショップで端末を購入した場合以外はすべて有料になるという。こうした動きに対して「スマホが不得意な高齢者へのサービス放棄だ」という批判の声も上がっている。一方で、ドコモショップの窓口営業の人手不足は深刻で、「収益性のない過剰サービスから従業員を守るためには必要だ」との声もある。

有料化後のサポートは1回3000円

 ドコモは10月29日、次のようにプレスリリースした。

「2019年12月1日(日曜)から全国約2,300店舗のドコモショップで初期設定サポート内容を統一し、店頭で端末をご購入いただき『初期設定・データ移行』を希望されるお客さまに対し、全店無料でサポートを実施いたします。サポートの範囲は『Apple ID・Googleアカウントの設定/dアカウントの設定/ドコモアプリケーションの設定/データのコピー』となります。

 ドコモオンラインショップ、量販店、一般販売店で購入した端末をドコモショップへ持ち込み、サポートを希望されたお客さまに対しても、一様に全店でサポートをさせていただくために、有料メニューとしてご提供させていただきます」(原文ママ、以下同)

 一回のサービスを受ける料金は3000円。決して安い価格設定ではないが、インターネット上では次のように有償化を評価する声が多い。

「先日ドコモショップ行ったとき、ご高齢の方が『パスワードが分からなくなった。でも初期化されては困る。どうにかしてくれ』と延々高圧的に話していて、従業員の人が本当に可哀想だった」

「従業員を守る傾向に世の中が変わってきている。人口減少の中で会社が生き残るには重要な一手」

高齢者の対応で消耗する現場

 全国のドコモショップは約2300店。そのうちドコモの直系である機能分担子会社のドコモCSが運営する店は約60~70店舗だ。そのほか大半は各地の代理店が運営している。実際、現場は今度の有償化をどのように思っているのか。福島県内で地元の代理店が運営するドコモショップに勤める20代女性店員は次のように語る。

「高卒で一緒に入社した子は8割くらい離職してしまいました。お店の清掃から始まり、ディスプレイの飾りつけなど雑務も多く、とにかく高齢のお客様の対応が大変です。キーロックの暗証番号をお忘れになった方、うまくスワイプ操作ができない方、電話帳の登録ができない方などの相談で丸1日が終わってしまうことも多いです。中には不機嫌だったり、一方的に大きな声でまくしたてたりする方もいて、気の弱い子は体調を崩してしまうこともありました。

 福島県内では東京電力福島第1原発事故後に、複数の避難自治体が住民への情報提供のためにNTTのandroidタブレットを全戸配布しました。配布から数年が経ちましたが、今でもそれらの使い方や不具合の相談でいらっしゃる方も多いです。

 基本的に地元代理店運営のショップの収益は、新規加入や機種変更時に各種オプションをどれだけ契約できるかにかかっています。それに加えて、携帯キャリアからはたびたび『ガラケーユーザーをスマホに機種変更して、買ってもらうよう営業しろ』というプレッシャーをかけられています。

 スマホを売れば、さまざまな相談にいらっしゃる方が増えて私たちの負担も増えます。でも、店の収益のためには売らなくてはいけない。でも、明らかに使いこなせそうにないものをお年寄りに売るのはどうなんだろうと思います。板挟みです。

 同じ販売員をやるにしても、ここまで大変ではなく、手ごたえのある仕事を求めて東京に出て行ってしまった後輩も多いです。

 正直難しいです。震災や原発事故で被災した上に慣れない電子機器を押し付けられて困っているお年寄りに、改めてお金を払えというのはかわいそうです」

 一部報道では、おおむね販売店の店員は有料化に好意的な印象に報じられているが葛藤もあるようだ。ドコモが有料化に舵を切ったことで、今後、ソフトバンクやauなど大手携帯キャリアが追随する可能性もある。

転換期にある携帯ショップ

 こうした業界の流れに関して、スマホ評論家の新田ヒカル氏は次のように解説する。

「高度経済成長期に固定電話が普及していったころ、NTTの店頭窓口はとても充実していました。現在の郵便局のように各地に窓口があり、電話に慣れていない多くの人たちを受け入れていました。NTTとしては社会インフラとしての電話を、日本社会に普及させるという強い思いがあったのだと思います。時代は流れ、今、東京都内に固定電話の受付窓口は一つもありません。

 同様に携帯電話が社会インフラとして普及していく過程で、ドコモは全国に数多くのドコモショップを開設していきました。当時は新規のお客さんも多く、収益性も高かったことが大きな理由です。そして現在、携帯電話は社会インフラになりました。普及期から転換するタイミングに差し掛かっているのだと思います。

 シニア層への無償サポートサービスを実施していた背景には、ガラケーからスマホに新規加入する方が多かったということあって、手厚く実施してきました。しかし今はスマホが普及し、社会のインフラとして根付きました。お年寄りもほとんどが契約している状況です。

 お年寄りが店頭窓口で相談する内容も、スマホの初歩的な使い方より、ネット上のサービスをどのように便利に使うかという話題にシフトしています。ネット上で解決できる問題なのであれば、携帯キャリアとしては労力を費やしたくないというのが本音だと思います。

 もう一つの背景としては、全国的な若年層の人手不足です。現在、仕事を引退する高齢者は毎年200万人です。一方、新卒就職者は毎年約100万人。労働力は確実に落ちています。もはやオンラインでできるサービスはオンラインでやるしかないというのが、携帯キャリアショップの業務にかかわらず日本の経済の実情なのだと思います」

 時代を取り巻く技術は移り変わっていく。ちょうど今、ドコモショップを訪れている高齢者は固定電話が普及していった時代を生きてきた。新しい技術に戸惑うこともあるかもしれない。でも、高度経済成長期という激動の時代を乗り越えてきた世代なら、きっとスマホも使いこなすことができるだろう。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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