滋賀県警、調書捏造…軽度発達障害のある女性、冤罪で12年服役 刑事の証人喚問を拒否の画像2
大津市の滋賀県警本部

 弁護団の池田良太弁護士に筆者は「山本刑事は西山さんが無実とわかっていて罪人に仕立てたと思いますか?」とも尋ねた。

「この事件は有罪立証の証拠は自白調書だけで、ほかに何も証拠はない。自白調書に出ている、目をぎょろぎょろさせるなど医学的にあり得ない内容に誘導された、調書捏造です。それを犯人しか知りえない秘密の暴露と主張していた。このあたりから、山本刑事は西山さんが無実とわかっていたと思えます」

冤罪の原因解明は遠く

 西山さんの再審請求に対し、大阪高裁は「自白調書は誘導された可能性がある」「自然死の可能性がある」として開始を決定。最高裁が今年3月に検察の特別抗告を退けて、再審の開始が決まっている。4月から始まった三者協議では、以下が決定された。

(1)検察側が新たな証拠を提出しない

(2)法医学者の証人尋問を求めない

(3)殺害に関する西山さんの自白調書を弁護側が証拠として採用しないよう求めている点について、裁判所が証拠排除しても異議を申し立てない

(4)一日で結審する

 以上より、無罪判決は確実視されている。すでに大津地検の高橋和人次席検事は「新たな立証はせず、(確定審までの裁判で)取り調べられた証拠等に基づき、裁判所に適切な判断を求めることにした」とのコメントを出した。しかし、取り調べ段階で西山さんを罪に陥れた滋賀県警の刑事の証人喚問などを拒否しており、冤罪を生んだ原因の解明や責任追及は難しい。

 西山さんは最後に「滋賀県警は汚いことをしていた。まだたくさんあると思う。証拠開示を求めても出さない。もっと報道してほしい」と話した。「冤罪に巻き込まれて失った部分もあるけど、得た部分もある」と、筆舌に尽くしがたい苦難を味わってもどこまでも前向きだった。

(写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト) 

【滋賀・湖東記念病院事件】

 滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年5月、入院中の男性患者(当時72歳)が死亡。県警は当初、人工呼吸器が外れたことを知らせるアラームが鳴ったのに処置をしなかった、と業務上過失致死容疑で正看護師を聴取していたが、アラーム音を聞いた人がおらず難航した。

 ところが04年7月、同僚の看護助手だった西山美香さんが任意聴取に対して「人工呼吸器のチューブを外した」と自白し、殺人容疑で逮捕した。シングルマザーだった正看護師を案じての自供だったが、西山さんは公判で否認に転じた。しかし捜査段階の自白調書が決め手となり、07年に最高裁で懲役12年が確定、満期服役した。西山さんが求めた第1次再審請求は11年に棄却されたが、第2次再審請求は15年に大津地裁で棄却。西山さんが17年8月に和歌山刑務所を出所した後、12月に大阪高裁が再審開始を決定し、最高裁で確定した。

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