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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

米国で孫を出産させ米国籍取得→多額の贈与&贈与税回避!だが税務署から多額贈与税を課された!

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「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな金は「使途秘匿金」です。

 日本の相続税贈与税を逃れるために、海外に転出するお金持ちは後を絶ちません。もっとも有名なのは、服だけ持って香港に引っ越したとされる武富士の創業者の長男に、贈与税が賦課された事件。最高裁まで争って、納税者側が勝訴。還付加算金400億円を含む、2000億円が支払われました。

 その後、税制改正が行われ、5年以上海外にいなければいけない、10年以上海外にいなければいけないと、ルールは変わっていきました。

 主に問題となるのは、「生活の実態」がどこにあるのか、生活の本拠はどこなのか、住所はどこなのか、です。当時は、家族を日本に残して、時折日本で仕事をしていて、1年の3分の1は日本にいるような状況でも、残り3分の2を海外で過ごせば、住所は海外にあると判断されました。

 今回は、贈与税を逃れるために、生まれる前に国籍を変えた事例を紹介します。

米国で出産したのちに贈与

 大きな出版社の会長が、まだ生まれる前の孫のために、資産を贈与しようと考えました。ただし、日本の税法が適用されると、多額の贈与税を納めることになります。かといって、租税回避のためだけに、家族ともども海外に何年も住まわせるのは難しい。

 そこで、出産前に母親を渡米させ、アメリカで出産。両親は日本国籍のまま、孫にアメリカ国籍を取得させました。さらに、アメリカの信託制度を用いて、現金を直接渡すのではなく、信託の分配金をもらえる人(受益者)を孫に設定するという方法で、贈与が行われました。贈与の数カ月後、孫は日本にやってきて、一般的な日本人として生活を始めました。

 このときのルールでは、日本に住んでいる人も、日本に住んでない日本人にも、日本の相続税や贈与税がかかるようになっていました。

 しかし、外国籍で外国にいれば、外国にある財産には、日本の相続税と贈与税はかかりませんでした。そこに目をつけた、会計士か税理士かコンサルタントが、租税回避スキームを提案したものと思われます。

米国生まれ、米国籍でも課税される?

 さて、日本に住所を有していないアメリカ人には課税できませんが、生まれたときからアメリカにいる孫は、日本に住所があったといえるのでしょうか。

 孫は信託行為があったとき、生後8カ月でした。もちろん、ひとりでは生活できません。親に養育されているはずです。孫の住所を判断するには、親の住所、つまり生活の本拠がどこであるかを判断する必要があります。

 では、親の生活の本拠はどうでしょう。出産前は日本にいて、出産後も日本にいます。アメリカでの生活は、一時的なものにすぎません。継続性、安定性をみると、生活の本拠は日本にあったようです。そうすると、その子供も生活の本拠は日本にあったといえます。

 このような判断で親も子も日本の居住者とされ、日本の贈与税がかされることになりました。しかし、最高裁で上告が棄却され、高裁の判決が確定したこの事件は、地裁では納税者が勝訴していました。それほど、判断の難しい内容だったのです。

 さらに、同様のスキームによる租税回避を防止するために、以下のような新たなルールがつくられました。

「日本国内に住所を有しない個人で日本国籍を有しない者が、日本国内に住所を有する者から相続若しくは遺贈又は贈与により取得した国外財産を、相続税等の課税対象に加える」

 これにより、日本におらず、かつ日本国籍がなくとも、日本にいる人から贈与や相続を受ければ、日本の税金の対象となりました。

 税の世界は、いたちごっこが続いています。新たなルールができれば、また新たなスキームを誰かが考えて、利用されます。多額のコストがかかるので、そのようなスキームは、お金持ちしか使えません。

 複雑になればなるほど、優秀なスタッフを集められるお金持ちが有利になっていくように思えます。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

●さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。2017年12月14日、処女作『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)が発売された。

「ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員が社会をサバイバルするために必須の知識のみを厳選。たのしく学べます」

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