NEW
成馬零一「ドラマ探訪記」

『スカーレット』成功の要因と恐ろしさ…格差や差別が露呈する「令和」にふさわしい朝ドラ

【この記事のキーワード】

, , , ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
『スカーレット』成功の要因と恐ろしさ…格差や差別が露呈する「令和」にふさわしい朝ドラの画像1
連続テレビ小説「スカーレット」|NHKオンライン」より

 NHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『スカーレット』は、淡々としながらもハードな手触りが残る朝ドラだ。物語は終戦直後、昭和22年(1947年)の滋賀県から始まる。焼き物が盛んな町・信楽に移住した川原喜美子(戸田恵梨香)は、幼少期に焼き物に興味を持ち、やがて陶芸家へと成長していく。

 終戦直後を舞台に実在した人物(今作では陶芸家の神山清子)の半生をヒントにヒロインの一代記を描くというスタイルは、朝ドラの基本フォーマットであり、あらすじや設定だけを抜き出しても、本作の魅力はイマイチ伝わらないのではないかと思う。

戦後日本の現実を描いた恐ろしさ

 喜美子の家は貧しく、戦争帰りの父親・常治(北村一輝)は酒ばかり飲んでいて借金まみれ。中学卒業とともに大阪の荒木荘で女中として働くようになるのだが、半人前ゆえにお給金はわずかしかもらえず、ほとんどは実家への仕送りでなくなる。

 医学生の酒田圭介(溝端淳平)と仲良くなるが、喜美子に嫉妬した酒田の恋人の令嬢・泉田あき子(佐津川愛美)に気を使った酒田が荒木荘を出ていき、初恋はあっさり終わる。そして2年半働き、女中としてやっと一人前になりかけたところで、実家に呼び戻されてしまう。

 喜美子を取り囲む男尊女卑的な家庭環境や貧富の格差は、戦後日本においては当たり前に存在した風景だが、それを当たり前のものとして淡々と描いていることが『スカーレット』の恐ろしさだろう。

 現在と過去のズレは、既存の朝ドラにおいては現代の視聴者の価値観に合わせて修正される。たとえば、戦時中を舞台にするならば「主人公とその家族だけは軍国主義の日本は間違っていると、当時から思っていた」という具合に。

 あるいは、貧しい生まれだったとしても、周囲の人々はヒロインに優しく幸運に恵まれ成長していくといった具合に、オタク用語で言うところのチート(ズル・インチキの意味、コンピューターゲームにおいて主人公の能力が圧倒的優位に設定されること)設定で物語が進むため、美しい過去としてノスタルジックに描かれることがほとんどだった。

 対して『スカーレット』は、ヒロインの喜美子に対して、とにかく周囲が優しくない。父親は精神的・経済的に喜美子に依存し、搾取しており、喜美子が自分のお金で通おうとしていた美術学校の入学も、その入学金を借金返済に充てられ、反故とされてしまう。

 強権的な父親は過去の朝ドラにも多数登場したが、常治の場合は“心の弱さ”で喜美子を抑圧するのだからタチが悪い。これは常治にベタ惚れの母・マツ(富田靖子)も同様で、家族の弱さが喜美子を困難に追いやる姿を本作は容赦なく描いていく。

 そんな困難に対し、喜美子は泣いたり叫んだりせず、これが自分の運命なのだと言わんばかりに健気に受け入れていく。喜美子は、貧富の格差や女性差別のある世界を当たり前のものと思っており、自分が理不尽な無理ゲー(難易度が異常に高すぎて普通にプレイしたらクリアすることが無理なゲーム)の世界に生きていることに気づいていない。それが見ていてやりきれない。

『スカーレット』成功の要因と恐ろしさ…格差や差別が露呈する「令和」にふさわしい朝ドラのページです。ビジネスジャーナルは、連載、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!

関連記事

BJ おすすめ記事