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いきなりステーキ、赤字転落で一斉大量閉店…価格乱高下で客が“得体の知れない不安”

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

 ひとつは価格の高さだ。「いきなり!ステーキ」は頻繁に価格改定を実施し、価格帯を引き上げてきた。たとえば、看板商品の「リブロースステーキ」は、開業時は1グラム当たり 5円だったが、その後、段階的に値上げを実施して価格を大きく引き上げている。17年7月には6.5円から7.3円に値上げした。これで開業時から2.3円高くなったわけだが、オーソドックスな 300グラムであれば690円も高くなったことになる。300グラムで2190円となるわけだが、割高な印象が否めない。

 もっとも、まれには値下げも行っている。たとえば17年10月には「リブロースステーキ」を1グラム当たり7.3円から6.9円に引き下げた。今年11月12日には「CABサーロイ ンステーキ」を同8.2円から7.5円に値下げしている。

 このように値下げも実施しているが、全体的には値上げのインパクトのほうが大きい。こうして高くなった「いきなり!ステーキ」は敬遠されるようになった。

価格改定繰り返し価格帯が不明瞭に

 値上げと値下げを繰り返して価格帯が把握しづらくなっていることも問題となってい る。これが価格設定に関する2つ目の問題だ。

 価格が頻繁に上下してしまうと、消費者は「いきなり!ステーキ」の価格帯を把握することが難しくなる。さらに、グラム単位での量り売りを採用していることも把握のしづらさに拍車をかけている。「リブロースステーキ」を300グラム注文していくらになるのかを瞬時に導きだせる人は極めてまれだろう。これは消費者に得体の知れない印象を与えるという意味で大きな問題といえる。

 人は得体の知れないものに不安を感じ敬遠する。そのため、得体の知れない店だと消費者に認識されてしまうと、集客は難しくなる。スナックなどの飲み屋で「明朗会計」とうたう店舗があるのは、消費者に不安を与えずに集客したいためだ。100円ショップがこれだけ大きく成長できたのも、「どれも100円」というわかりやすい価格設定で消費者に不安を与えないことが大きい。消費者は安心して買い物ができるのだ。

 リゾート運営大手の星野リゾートが展開する、主に若者をターゲットにしたホテル「BEB(ベブ)」が、35歳以下のみの宿泊であれば1部屋の料金が固定となる制度を採用しているのも、同様の理由だ。日によって料金を変えるホテルが少なくないが、BEBは固定料金制を採用することで、消費者の不安の解消に努めているのだ。同社の星野佳路代表は固定料金制を採用した理由について、19年4月16日付日経ビジネスのインタビューで「価格変動のわかりにくさが宿泊需要を落としているのではないかと考えた」と述べている。

 価格が頻繁に上下すると、消費者に不安を与えてしまい敬遠されるリスクが生じてしまう。これは 「いきなり!ステーキ」でも起こり得る話で、実際にそれが起きてしまっている。それに加えて価格が高い印象が根付いてしまっており、こうしたことが客離れにつながり、競争力の低下につながったと考えられる。

「いきなり!ステーキ」の失速において、「自社競合」は副次的なものにすぎない。それよりも価格設定の問題を解決して消費者の不安を解消し、競争力を高めることが必要だろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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