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トヨタの「若手は原則エコノミー」「ボーナスは成果次第」は日本の主流となるか?

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「Getty Images」より

 11月5日付の報道によると、トヨタが「若手社員の海外出張をこれまでのビジネスクラスから原則エコノミークラスにする」という提案を労働組合側に申し入れた。決定事項ではなく、今後労働組合と協議を進めていく予定であるとのこと。このニュースが発表されたとき、ネットユーザーからはさまざまな反響があった。

 「会社の出張で若手がビジネスクラスを使えるの!?」と従来の規則に驚いている人もいれば、「日本を代表する企業なのに、年齢で区切って若手のみエコノミークラスに変更?」と今回の提案に疑問を抱いた人もいたようだ。

 トヨタによると「ビジネスからエコノミー」への変更対象者は、20~30代の主任職以下の社員である。若手社員は、渡航時間の長さに関係なくエコノミークラスになってしまう。しかし例外として、中南米やアフリカなどの地域は移動時間が長く、身体の負担が大きいということで、従来通りビジネスクラスという。

トヨタの海外出張の経緯

 トヨタは2008年以前までは、原則ビジネスクラスの利用が認められていたようだ。リーマンショックによる業績悪化のあおりを受け、2008年12月に原則エコノミークラス利用に変更している。

 しかし業績が回復してきた2011年2月には、10時間以上の渡航時間という条件付きでビジネスクラス利用が再び解禁された。このような経緯を辿って、今回の「若手社員のみビジネスからエコノミー」という見直しである。

優秀な社員を優遇する潮流にトヨタは逆行?

 さて現在、世界規模で優秀な人材の争奪戦が始まっている。アメリカ企業では、好景気が続いていたこともあって、出張に関する規定を緩めた企業も増えつつある。現在活躍している社員を厚遇することが長期的に見れば経費削減になるという考え方だ。優秀な働き手が出張を苦に退職すれば、後任を探して一から育てなくてはならない。特にアメリカは、日本に比べて転職が活発だ。

 その手間暇を考えたら、ビジネスクラスにお金を出したほうが費用対効果が高いといえる。優秀な働き手を囲い込むための策は、もちろん飛行機のクラスだけではない。人材を確保するために高額報酬を設定している会社は多い。さらに体力のあるグローバル企業は、福利厚生に力を入れるのが常識となっている。

 日本も世界の流れを追うようにして、高額報酬を提示する会社が出てきた。NTTデータや東芝が良い例だろう。しかし、なぜトヨタは社員を厚遇する流れに逆行するかのような「ビジネスからエコノミー」という案を出したのだろうか。

 トヨタは、2019年3月期連結決算(米国会計基準)で日本企業で初めて売上高が30兆円台を突破した日本を代表する企業である。日本国内どころか、世界有数の企業であることは周知の事実だ。

 しかし、トヨタ社長による「終身雇用の維持は厳しい」という発言が、世間をざわつかせたのは記憶に新しい。これは流れの速い世界で戦っていくには、日本独自のルール適用が足枷になると判断したと受け止められている。しかも自動車業界は今後、自動運転の開発でIT業界との技術競争にもさらされるため、研究開発費は莫大になる。こうなると、これまでよりも優秀な人材を必要としながらも、余計なコストはかけられない状況になっていく。

「コストをかけられないが、会社存続のために優秀な人材が欲しい」

 この「コストをかけられないが、会社存続のために優秀な人材が欲しい」というのはトヨタに限った話ではない。今の日本企業の多くが同じような状態だろう。中には「より良い待遇」を求めて流出する社員が後を絶たず、人手不足になり求人を出しても集まらず、離職も止まらないという悪循環に陥り倒産するケースもある。

 優秀な人材は好待遇のところへ流れていく。ではどうやって、優秀な人材を囲い込むのか。優秀な人材を好待遇で獲得する一方で、成果を出せていない社員は冷遇してバランスをとる評価制度が、さらに活発化すると考えられる。すでにそうした評価制度は日本に浸透しているが、今後も人件費のメリハリをつける流れが加速していくだろう。大手企業では、人事評価が低いという理由で降格させられる会社も多い。

年功序列から実力評価主義へ

 これからは日本も、年功序列から実力評価主義への移行がより顕著になっていくだろう。実際にトヨタは実力評価制を導入している。しかも今年の冬のボーナスからは、その傾向がさらに強まっているようだ。

 というのも、トヨタはボーナスの成果給部分が最大4割を占めている。人事評価が最高だと、成果給部分が前年の1.5倍になるという報道が出ているのだ。頑張った分だけ報われる制度は、優秀な在職社員の士気が向上する。トヨタも優秀な社員には厚い待遇を用意しているのだ。

 今日、多くの会社がトヨタの制度を参考にしている。まだ時間はかかるだろうが、多くの会社で優秀な社員の好待遇が増えてくるだろう。

実力評価主義にはデメリットも

 とはいえ、実力評価主義には問題もある。人が人を評価するので、すべての従業員に対して公平かというとそうとは言い切れない。実際、「自分は頑張っているのになぜ良い評価が得られない」と不満に思っている人もいるだろう。上司との相性が悪い場合は、最悪だ。

 どちらかが異動するまで不当評価が続く可能性もある。中には、部署異動しても上司が変わらない小さな会社もあるだろう。実力評価主義がすべての判断基準になってしまうと、評価しにくい間接部門の人は賃金の劇的な上昇が望めないというデメリットも出てくる。

 しかし、飛び抜けて優秀な社員が会社に大きな利益をもたらすのは紛れもない事実である。評価して待遇に反映させないと、優秀な人材から抜けていく可能性がある。

 人口減少社会に突入し、労働者不足が懸念されている中、日本企業にとって優秀な人材の確保はさらに深刻な課題である。国内だけでなく、世界中から若い人材をかき集めようと、大学でロビー活動している企業もいるのだ。優秀な社員を優遇して囲い込んでいく流れは、大手企業だけでなく中小企業にも浸透してくるだろう。

 今回トヨタが労働組合側に提示した、若手のみ「ビジネスからエコノミー」は、年功序列の悪しき慣習を持ち込んだようにも見えるが、普通の働きをする者は「普通の待遇」=エコノミーへ、優秀な者は「好待遇=ビジネス」への土台作りのファーストステップなのかもしれない。

(文=河田ねね子)

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