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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

公立病院424再編リストが問いかけるもの…医療関連負担に圧迫される地方財政

文=小黒一正/法政大学教授
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 年金・医療・介護などの社会保障給付費のうち、地方財政を最も圧迫するのは医療関係の負担分である。特に深刻さを増しているのが、市町村などが運営する公立病院の赤字拡大であり、その裏側で進行する自治体の補填である。総務省「地方公営企業決算状況調査」によると、2013年から2017年において、公立病院の繰入金は年間8000億円程度であり、新潟県の財政問題も県立病院への繰出金の負担問題が関係している。

 また、公立病院・公的病院は、経営にかかわりなく、人事院勧告や年功序列方式などに従って、医師や看護師の給料が上がる仕組みになっており、経営が非効率であるという指摘も多いが、全国783の公立病院のうち671の病院において、各々の「自治体の補填を除いた本業の赤字総額は2017年度に4782億円となり、12年度比で5割増」となっている(2019年4月25日付日本経済新聞)。

 なお、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、どの地域に住む国民にも一定の行政サービスを提供する財源を保障するものとして、地方交付税交付金もあるが、国の財政も厳しいなか、地方交付税交付金にも実質的なシーリングがあり、それで地方財政の問題を解決することは困難な状況である。

「2040年の医療提供体制を見据えた改革」

 この問題の解決を図るため、財務省や厚生労働省はいくつかの政策を打ち出している。その一つが「2040年の医療提供体制を見据えた改革」であり、改革の柱は3つで構成されている。第1の柱は「医療施設の最適配置の実現と連携」で、これは2025年までに目指すべき医療体制の将来像を示す地域医療構想の実現とも表裏一体の課題である。第2の柱は医師・医療従事者の働き方改革で、病院勤務医の過酷な時間外労働の上限規制であり、第3の柱は実効性ある医師偏在対策である。

 急速な人口減少が進む地方で、この3つの課題に同時に対応する方策は、域内の人口減少の将来予測を見据えつつ、医療施設の再編統合を行い、医療機能の重点化や効率化(選択と集中を含む)を進めるしかない。選択と集中を行えば、現在のところ地理的に分散化されている病院勤務医の人的資源も有効活用でき、その過酷な時間外労働の是正も一定程度は進むことが期待される。また、胃がんに対する手術件数が多い医療施設のほうが、実施件数が少ない医療施設と比較して死亡率や周術期合併症の発症率が低いという研究結果もあり、医療機能の重点化は、医療の質を向上することも期待できる。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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