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ほうれい線やシワが減る?金沢市の山中の「ビダルコーヒー」が密かに人気

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

プラセンタ入り茶菓子とコーヒーも開発

 一方、緑茶由来のアミノ酸テアニンを含有する「テアニン珈琲」は、水素焙煎珈琲よりもコクがある味だ。ドリップパックには「テアニン入り遠赤外線焙煎コーヒー」と明示してある。

 取材時には「茶寿プラ煎」(1袋500円)も出してくれた。生姜味の甘い煎餅だ。

「成分には胎盤由来の良質なプラセンタもあり、カルシウムとマグネシウムが豊富に含まれています。健康食品や医薬品にも使われるプラセンタ服用者のアンケートからは、内分泌系や免疫系、アレルギーなどに効果があったという声もあります。

 最近、プラセンタをナノ水に溶かし、焙煎豆に吸収させた『プラセンタ入り水素焙煎珈琲』の開発に成功しました。まだ研究開発中ですが、さまざまな人に飲んでいただき、ほうれい線やシワが薄くなったり、元気になったなどの声が上がっています」(同)

 水素焙煎豆も100グラム750円から揃え、商品を通販で買う顧客も増えているそうだ。

「水素焙煎機で抽出した豆は、通常の豆が約1カ月のところを約3カ月、粉にして1週間のものが6カ月(窒素封入ドリップパック)保存できます。抽出後のコーヒーなら冷えても味の変化が少なく、雑味もほとんど出ません。約2日間は風味が保ちます」(同)。

 筆者が持参した別のドリップパックも飲み比べて話を聞いたが、「こちらは少し酸化してきましたね」と“ライバル心”も燃やしていた。

 ビダルコーヒーの所在地は、廣瀬氏がかつて購入した土地で所有面積約1万坪あるという。周囲の建物内には製造機や試作機もあり、新たな研究にも余念がない。

「受賞」のキッカケは兼六園の銅像

 イグ・ノーベル賞を受賞した研究についても紹介しよう。受賞内容は「ハトに嫌われた銅像の化学的考察」というものだった。

 金沢の観光名所・兼六園には多くのハトがいるが、園内にある日本武尊の銅像には、なぜかハトが寄りつかない。その理由を探り、銅像の素材の化学成分にあるのではないかと考え、ハトだけでなくカラスも寄りつかない「カラス除けの合金」を発明したのだ。

 疑問のキッカケは半世紀以上前、金沢大学理学部の学生時代に日本武尊の銅像を見たことだったという。現在は金沢市角間町に広大なキャンパスを持つが、当時は金沢城郭(金沢城公園)がキャンパスだった。城郭は兼六園に隣接しており、当時の金大生には、兼六園がより身近な場所だったのだ。

 普通の人が気づかないことに着目し、それを解明するために徹底研究する。「仮説」を立てて試作品をつくりながら「検証」する姿勢は、イグ・ノーベル賞を受賞した研究も「コーヒーの風味」も共通するようだ。

今後の課題は「エビデンス」と「シズル感」

 こうしたユニークな活動には続きがある。紙幅の関係で今回は詳述しないが、吉村清己氏(ビダルエリス研究所代表)と一緒に「水素添加過熱蒸気を用いた調理機器」も開発した。廣瀬氏の教え子には大学教授が20人以上いるという。吉村氏は10 年来の共同研究者(金沢大学講師)だ。

 ただし、水素焙煎のコーヒーについては、筆者は2つの課題があると思う。

 ひとつは「エビデンス」(証拠や根拠)の充実だ。健康機能性食品として、より注目を浴びるには「安心・安全」での積み重ねが欠かせない。多数の論文を作成してきたベテラン学者には釈迦に説法だろう。それでも長年「消費者心理」を取材してきた筆者は、「データで説明しやすい『安全性』と、心理によって左右される『安心』をどう両立訴求するか」で、各企業が試行錯誤する例を見てきた。

 もうひとつは、商品のシズル感(消費者が商品を欲しくなる五感)訴求だ。

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スターバックス弘前公園前店の店内にあった「リンゴのボード」(9月30日の取材当時)

 シズル感は機能性商品であっても欠かせない。口に入れる食品は「おいしそう・楽しそう」と思われないと、医薬品のようになってしまうからだ。

 カフェの世界でいえば、スターバックスコーヒーの商品訴求は上手だ。9月末、筆者は「スターバックス弘前公園前店」を取材した。弘前市はリンゴ生産量日本一の市で、取材時は限定品のアップルパイを販売(現在は販売終了)。店内には、パートナー(従業員)手づくりの「おいしいアップルパイが届けられるまで」とのボードも掲げられていた。

「機能的価値」と「情緒的価値」

 マーケティングの視点では、商品の訴求には「機能的価値」と「情緒的価値」がある。

 今回紹介した水素焙煎のコーヒーは、いうまでもなく機能的価値で健康食品に似ている。お客は一定の味を楽しみつつ、健康面での効果・効能を期待する。

 一方、情緒的価値は消費者の感性にも訴えるもの。コーヒーなら、味だけでなく見た目もかわいい「ラテアート」や「デザインカプチーノ」が情緒的価値だ。前述のスタバの取り組みも、それに当たる。

 現代の消費者への商品訴求は「AだからBはしない」というのは難しい。どこかでA(もしくはB)の要素を取り入れる意識も大切だ。機能的価値(機能性商品)であっても「もう少し情緒的価値を意識しましょう」といえば、ご理解いただけるだろうか。

 コーヒーブームによって、さまざまな角度からのアプローチが生まれているのは「生活文化」の視点でも興味深い。斬新な訴求に動き続けなければ、消費者と商品との出合いもなく、新展開も見えてこない。その意味で、水素焙煎コーヒーの進化にも期待したい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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