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木下隆之「クルマ激辛定食」

自動車で何度も追突事故に遭う人に共通する原因と運転の癖

文=木下隆之/レーシングドライバー
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「Getty Images」より

 先日、知人が経営する板金修理工場で取材をしていたときのことだ。後部を激しく損傷した「トヨタ86」が運ばれてきた。サスペンションがあらぬ方向に曲がってしまっていた。タイヤが真っ直ぐに転がらない。キャリアカーから、クレーンで吊り上げて降ろされた。

 所有者は、哀れな姿に変わり果てた愛車を前にうなだれていた。

「3カ月前に修理したばかりなのに、また事故に遭ったんですって。運の悪いお客様なんですよ」

 知人はそう言った。聞けば、追突事故は3回目だというから、落胆ぶりは想像して余りある。

「昨年も一度やられてますからね。相手が加入している対物保険での修理だそうですが、気の毒ですよね」

 トヨタ86をせっかく新車で購入したというのに、手にした直後に追突されたという。

「お祓いが必要ですよね」

 知人は、運の悪い客を心配してそう言った。それを聞いて僕は、小首をかしげた。約1年の間に3度も追突事故に遭うという。事故の多さを、運が悪い、それだけを理由にするのには無理がある。もしかしたら、被害者の運転にも原因があるのではないかと感じたのだ。

 被害者の彼に、絶対的な過失があるとまではいわない。実際に、保険会社が算出した過失割合は9対1で、先方の過失を多く認めた。だが、被害の彼の運転スタイルに、どこか追突を誘い込むアクションがあったのではないかと、想像するのだ。

 というのも、追突事故に遭うドライバーは、たいがい複数回の追突事故を経験する。追突事故に遭わないドライバーは、まず事故に遭わない。実際には、助手席に乗れば、追突事故の被害者になりそうなドライビングであるか否かを判断できる。被害者には、被害者になりそうな、“追突を誘い込むようなアクション”があるのだ。

 まず、車間距離が少ない傾向にある。追突するドライバーは車間距離が絶対的に不足している。一方で、追突されるドライバーも、車間距離が不足しているのだ。

 次に、視野が狭く近い傾向がある。追突するドライバーは目線が近い。それによって、はるか前方の状況判断が遅れる。一方で追突されるドライバーも、はるか前方の状況判断が遅れるからこそブレーキングが急になり、追突を誘い込む。

 また、反社会性パーソナリティ障害の傾向が強い人も多い。ステアリングを握ると、人格がやや狂暴になる。自然な車線変更で自車の前に入られた場合でも「割り込まれた」と感じたり、法定速度を守った自然な流れなのに意地悪なトロトロ運転に感じたりしてしまう傾向にある。そのたびに「チェッ」と舌打ちする。それが後続のドライバーを混乱させ、追突を招く。

何度も追突される人は運転の見直しを

 つまり、追突するドライビングと、追突されるドライビングは、ほとんどの点でイコールで結ばれる。おそらく追突されるドライバーは、追突の経験も少なくないのだろうと想像する。

「困ったものでさぁ、前方不注意のドライバーがいてさぁ、そいつに追突されちゃったんですよ」

 そう言って加害者の運転を嘆く被害者も少なくないが、僕には自らの運転の不適格をさらけ出しているように聞こえるのだ。

 もちろん、まったく過失がなく、安全度の高いドライビングをしていながらも追突事故に見舞われることもないとは言わない。だが、何度もに追突事故に遭うならば、一度自らのドライビングを見直してみることをお勧めします。追突を誘い込んではいないのだろうか、と。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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