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銃殺された神戸山口組幹部の葬儀日は五代目山口組組長の命日…7年の月日と山口組の激動

文=沖田臥竜/作家
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警察や報道陣も見守る中、古川幹部の通夜が行われた

 神戸山口組の古川恵一幹部が、六代目山口組の元組員に射殺されて2日後となった11月29日の夜。兵庫県尼崎市内の斎場には、神戸山口組・井上邦雄組長や神戸山口組と友好関係にある他団体の首脳が姿を見せていた。

 古川幹部の通夜は、その斎場で30日に17時から業界関係者を対象に、19時から故人と親交のあった一般関係の人々を対象にと、二部制という形で粛々と執り行われた。また、葬儀は12月1日、午前10時から営まれた。

 「警察当局も、何が起こるかわからない事態と考えてのことだろう。通夜も葬儀も、周辺は相当な厳戒体制だった。近くの小学校を機動隊員らの待機場所にしていたようだ」(地元関係者)

  確かに、斎場近くに足を運んだ筆者が知り得る限りでも、覆面車両や私服警官らが斎場近くを警戒にあたっている姿が目立っていた。現在の状況を当局サイドが非常事態と捉えてのことだろう。結果、両日ともにトラブルが起きることはなかったが、業界関係者も当局側も、このままで終わるはずがないと考えていたはずだ。

 筆者も同様の思いを抱きつつ、7年前のある日のことを思い出していた。古川幹部の葬儀が営まれた12月1日は、五代目山口組・渡辺芳則組長の7回目の命日でもあったのだ。

  2012年12月1日、著者はガレージ当番のため、神戸市灘区にある六代目山口組総本部に泊まり込んでいた。通常、土、日、祝日は、近隣住民に対する配慮からも行事などは執り行わず、総本部へと出入りする車両は極めて少ない。この日も土曜日ということもあって、総本部内にはゆっくりとした時間が流れていた。それが突如、最高幹部が乗る車両が総本部内に入ったのを皮切りに、施設内が慌ただしくなったのであった。

 筆者は、奥の部屋のモニターで車の出入りを見ながら、大事が起きたことを瞬時に察することができた。すると、携帯電話が鳴った。筆者が所属した組織の親分からであった。

「まだ、ほかの者に言うなよ。五代目の親分が亡くなられた。総本部から帰ってきたら、喪服に着替えて身体を空けておいてくれ」

 2005年に引退されていた五代目・渡辺組長は、71歳で人生の幕を閉じた。通夜に参列できたのは、プラチナと呼ばれる直参の親分衆と、五代目・渡辺組長の出身母体となる山健組の執行部、幹部、古参組長らだった。そして直参組長には、ひとりの付き人が同行を許された。また翌日に行われた告別式は、親族や山健組主体のみで、山口組会館で執り行われた。

 そのため通夜には、司忍・六代目組長を筆頭に出席可能な全直参組長、そして初代岸本組・岸本才三組長、芳菱会・瀧澤孝総長といったすでに引退されていた親分衆、さらに他団体からは、稲川会の清田次郎・現総裁や内堀和也・現会長が弔問に訪れていた。

 筆者は所属する親分のお付きとして斎場に向かったのであったが、くしくも今回射殺された古川幹部の車に同乗し、山口組会館に入ったのであった。

  今でもその時のことは鮮明に覚えている。筆者ら付き人の組員らが式場の前の廊下に整列し、弔問客を迎えていたのだが、その時、山口組会館の上から降りてきた髙山清司若頭らの存在感は強烈なものがあった。髙山若頭が姿を表すと、瞬時に緊張感が漂い、式場全体の空気が引き締まったのを肌で覚えている。それは、先月10月18日、髙山若頭が府中刑務所から出所してきて、品川駅で感じた空気とまったく同じであった。

  五代目・渡辺組長のお通夜では、最後方の列に2席空白ができ、たまたま筆者がその席に座らせてもらえ、五代目・渡辺組長の眠られる棺に合掌し、焼香させてもらうことができた。筆者が五代目・渡辺組長のお姿を見たのは、これが最初で最後であった。

  あれから歳月が流れた。その間に、髙山若頭の収監があり、六代目山口組が分裂。神戸山口組が誕生し、その後、任侠山口組が誕生しようとは、誰が想像することができただろうか。そして、髙山若頭の出所。その後に続く、神戸山口組幹部たちの襲撃、古川幹部の銃殺……五代目・渡辺組長の逝去から7年の月日を経て、山口組が再び大きく動き始めている。

(文=沖田臥竜/作家)

沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

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