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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

フィリピンに“リトル・トーキョー”があった…日本食レストランが現地で大人気

文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer
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フィリピン・マニラ(「Getty Images」より)

 仕事の関係で海外に暮らすビジネスパーソンの数少ない楽しみや息抜きといえば、ゴルフや日本食レストランでの食事などが相場だろう。フィリピン・マニラにも、「リトル・トーキョー」と呼ばれるエリアがある。アメリカ・ロサンゼルスのリトル・トーキョーと比較すれば、“リトル・リトル・トーキョー”というべき規模の小ささではあるが、それでも数軒の日本食レストラン、居酒屋、スーパーマーケットがあり、現地で暮らす日本人にとっては大変便利かつ憩いの場所となっている。

日本食レストラン・スーパー“Yamazaki”

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『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』(大﨑孝徳/日本実業出版社)

 筆者も月1回程度、リトル・トーキョーを訪れているが、主たる目的は日本食レストラ ン・スーパー“Yamazaki”での食事である。昭和の大衆食堂という雰囲気で、おいしく、かつ良心的な値段であり、フィリピン人からの人気も高い。

 日本食レストラン・スーパーの価格といえば、欧米なら概ね日本の2~3倍程度が相場である。大昔のことではあるものの、筆者がイギリスの田舎に留学していた際は、わざわざ電車で4時間かけてロンドンの日本食スーパーまで味噌やふりかけを買いに出かけていた。毎回、その価格の理不尽なまでの高さに驚きつつ、やむなしと購入していたことを今も鮮明に覚えている。

 しかし、フィリピンの場合、日本食レストランは日本と同額もしくはやや安い、スーパーは日本よりもやや高いといったレベルである。もちろん、一般のフィリピン人にとっては高額ではあるものの、多くの日本人にはリーズナブルな価格ということになるだろう。

 また、サービスに関して、たとえば“Yamazaki”のスタッフは概ねフィリピン人であり、日本語が話せるわけではないが、こちらが「ピクルス」というと、「おっ?あ、漬物ね」と片言の日本語で返答されるなど、心温まる、ある種の異文化体験のようなこともある。

まにら新聞

 日本食レストランに行く主たる目的は、もちろん日本食を食することだが、店内に置かれている現地の日本人向けに発行されている新聞や雑誌も大きな楽しみのひとつとなる。インターネットの普及により、日本のニュースは容易に入手できるものの、やはり物理的な紙としての新聞をひろげて読むという行為には、なんとも言えない心地よさがある。

「まにら新聞」は、東南アジア初の日刊邦字紙として1992年に誕生している。日本の記事に加え、現地の話題も充実している。今回は、まにら新聞に掲載されていた記事を通じて、フィリピンの最新事情について考えてみよう。

ドゥテルテ大統領の政治手法

 習近平国家主席との会談でガムを噛むなど、ユニークな言動により、日本でも知名度の高いドゥテルテ比大統領は、犯罪に対して国連から非難されるほど極めて厳しい姿勢で対処している。とりわけ違法薬物の取り締まりは「麻薬戦争」と呼ばれるほど壮絶なものとなっている。

 11月25日付まにら新聞の一面トップ記事は、ドゥテルテ大統領が違法薬物取り締まりに関する委員会の委員長を就任2週間余りで突如解任したという内容だった。彼女はもともとドゥテルテ大統領の取り締まり方針に反対であったにもかかわらず、なぜ委員長に就任し、さらになぜ突如解任されてしまったのか。この点に関して、「文句を言うならやってみろ」と地位に就かせ、「結局何もできないではないか」と解任することにより、政敵にダメージを与える意図が当初からドゥテルテ大統領にあったのではないかとの憶測も飛び交っているようだ。

 筆者はタクシーに乗ると必ず、ドライバーに「ドゥテルテ大統領を支持しているか?」と聞いている。日本では国民から極めて高い評価を得ているように報道される場合が多いが、実際は賛否両論、真っ二つに分かれている。「犯罪が本当に少なくなった。今のフィリピンには、彼のようなリーダーが必要だ」という賛成派と、「あまりに強硬すぎる、バランスを欠いている」という否定派の割合は、概ね半々程度のように思われる。

ジプニーの近代化

 また、「ジプニー近代化、1年間延期へ」という記事も目にした。ジプニーとは、トラックの荷台を人が乗れるように改造したバスのような乗り物で、フィリピン名物のひとつといってもよいだろう。もともとは終戦後、米軍が残していったトラックを改造することから始まったようだ。ちなみに、ジプニーのビジネスモデルは、運転手がオーナーから1日500ペソ(約1100円)で借りて、乗客から20円程度の運賃を徴収するという仕組みになっている。

 20年あるいは30年前の車両も多く、真っ黒な排気ガスを垂れ流している。しかし、運航ルート上であれば、どこからでも乗り降りができ、格安の運賃も手伝い、フィリピン庶民の足として定着している。運転手がひとりで会計も兼ねている。客は車の後ろから乗り込み、乗車後に運賃を支払うが、車内(実際、荷台だが)が混んでいて動けない際は、前の客にお金を渡し、バケツリレーのようにして運転手まで届けられる。お釣りがあれば、逆方向のバケツリレーで戻ってくる。こうした光景は、外国人である筆者の目には仲睦ましく映る。

 こうしたジプニーに対して、当初は来年の7月よりEUの排出ガス規制を採用する予定だったが、見送られた。新たな車両を購入するためには300~400万円が費用になるが、その工面のメドが立たないとして多くの反対があり、こうした声に政府が善処したということだ。

 確かに、ほとんどのジプニーは「これでよく動くものだ」と感心するほど古く、環境には大きな負の影響を与えているだろう。しかし、一昔前の日本の“トラック野郎”のように、それぞれのオーナーが自分の好みに合わせてペイントや装飾を施しており、こうしたジプニーはフィリピンの一種の文化とも捉えられている。恐らく、新たなジプニーは画一化し、なんの個性もなくなっていくのではないか。寂しい気もするが、これも時代の流れということだろう。
(文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』 プレミアム商品やサービスを誰よりも知り尽くす気鋭のマーケティング研究者が、「マーケティング=高く売ること」という持論に基づき、高く売るための原理原則としてのマーケティングの基礎理論、その応用法、さらにはその裏を行く方法論を明快に整理して、かつ豊富な事例を交えて解説します。 amazon_associate_logo.jpg

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