桐谷美玲Instagramより
12月3日放送の『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)に桐谷美玲がゲスト出演。彼女が人並みに食事を摂っても太らない体質だと話したことが一部ネット上で批判の対象になっている。女性芸能人の体型は「痩せすぎ」でも「太りすぎ」でも叩かれる話題となるが、なぜだろうか。
同番組ではこの日、拒食症女性のエピソードを紹介した。スタジオトークで司会の中居正広が桐谷に「美玲ちゃんはダイエットしたことないでしょ?」「(そもそもあまり)食べないでしょ?」と質問すると、桐谷は「食べます!」と即答し、食事は好きだが食べてもあまり太らない体質のためダイエットをしたこともないと明かした。
この桐谷の発言にSNSやネット掲示板では「食べても太らないわけないだろ」「嘘つき」「拒食症じゃなかったっけ?」と否定的な意見が書き込まれている。
食べても太らない体質、いわゆる「痩せの大食い」もいる。桐谷がそうした体質でないとも限らない。痩身で華奢な体躯の桐谷だが、本人は以前からよく「食べることが大好き」と公言してきた。
2017年のイベントでは、母親との共通点を「よく食べること」と明かし、幼い頃から食卓に並ぶおにぎりやハンバーグなどの手料理はすべてビックサイズで、「中学校、高校の頃、周りの友達のお弁当を見て、おにぎりの小ささにびっくりしました」と話した。
しかし当時も、桐谷の大食いエピソードは「嘘くさい」「太っている人への嫌味か」といったネットバッシングにつながっていた。
“痩せ信仰”の再生産
桐谷美玲のように「痩せすぎ」を非難される女性芸能人は他にも、山田優や小島瑠璃子、河北麻友子などがいる。彼女たちはただ「痩せている」というだけで、ネットバッシングの対象となったことがある。
ネットニュースでは、彼女たちがSNSにアップした写真をあげつらい、その痩せた姿が心配されて――というよりも、嫌われているとみなした筋書きの記事も多い。桐谷のように食べても太らないと明かした女性芸能人は、なぜか「ダイエットに励む世の女性たちを敵に回した」と対立構造に落とし込まれもする。
不思議なのは、痩せている男性芸能人たちに対しては同様のバッシングが見られないことだ。アンガールズ田中が「拒食症では」「吐いているに違いない」などと叩かれたことがあるだろうか。
そもそも「痩せたがり」なのは女性だけではない。男性向けのダイエット商材も腐るほどある。ただ、男性は女性ほどは痩せやダイエットに執着しない、という“イメージ”がある。そして実際に摂食障害の患者の男女比は1:10で圧倒的に女性患者のほうが多いという。2016年に厚生労働省が発表した調査結果によると、摂食障害の患者数は全国推計2万6000人で、1998年時よりも約1割増加。患者には早期の治療が必要となるが、全国的に専門の医療機関が少なく相談や治療の体制が整っていないことが指摘されている。
そこには女性たちが抱え込む「痩せていなければ美しくない」という強迫観念がある。あらゆるメディアで“モデル体型”が賞賛され、標準体重よりもずっと軽いにもかかわらずさらに体重を減らそうとする女性は後をたたない。コンプレックスを煽り、モノを買わせようとする脅迫的な商法も横行している。
「みんなそれぞれベストな体型は違うよ!」
健康的な肉体と、痩せ過ぎている肉体はかけ離れている。誰もが自分の好きな体型を追い求める自由があるが、「こうでなければいけない」と追い詰められて過剰なダイエットに走り、心身を害するのは自由とは言えない。
過剰な“痩せ信仰”は是正の方向に進んでおり、今や世界中のファッションウィークのランウェイではプラスサイズモデルが活躍している。今年6月にはスポーツウェアブランドの「NIKE」の英国旗艦店に肥満体型のマネキンが登場。このマネキンをめぐってはSNSで議論に発展し、なかには肥満への偏見に基づく否定意見も見られたが、体型の多様性を可視化させたNIKEの取り組みに賛同する声も多かった。
様々なしがらみからモノ言わぬタレントが多い日本の芸能界でも、徐々に意見するタレントが増えている。
小島瑠璃子は今年7月にInstagramで「他人の体型に口出しすること」について言及した。小島も一般ネットユーザーから「痩せすぎ」と非難されがちな女性芸能人のひとりだが、雑誌のグラビアで披露した水着姿のオフショットをInstagramにアップしたところ、体型をめぐったコメントが多かったという。
これに小島は<この時代にそういう事言ってもいいって思ってる、言いたい人がいるんだなー。ってちょっとだけブルーになりました>とショックを受けたことを明かし、次のようなコメントを続けた。
<太ってようが痩せてようがその人にあった体型があって、笑って暮らせる体型でいるのが一番人間らしい。それを他人が太ってる痩せてるっていうものさしで決めるのは窮屈だなって思います。とはいえ、私も気をつけよ。距離感が近いひとに、世間話として痩せたー? とか太ったー? とかも、その人がどう思ってるかわかんないな。グダグダいってすいません>
この投稿に対しても賛否両論があったが、小島は次のような意見を投稿している。
<Twitterみんなそれぞれベストな体型は違うよ! ナチュラルがいいよ! という事だったよ!>
<身体に対する悩みの方向性がそれぞれ違って、それは周りからはわからない。体質も持病も月のリズムもあるから、それぞれ健康で居られる身体でいたいよー。芸能人でも一緒だよ!>
個人がどのようなボディメイクをするかは自由だが、他人の体型を「太っている」「痩せすぎている」と批評することは、そのどちらも他人のプライバシーに踏み込みすぎている。「セクシーかどうか」「異性にとってちょうどいいかどうか」も論外だ。
(文=WEZZY編集部)