年収100万円台で“やりがい搾取”

――制作現場の働き方改革についてはいかがでしょうか。『時をかける少女』などで知られる日本テレビ子会社のマッドハウスでは、ある社員が月393時間労働で倒れたことやパワハラなどを告発し、同社は残業代の未払いについて労働基準監督署から是正勧告を受けました。また、『海獣の子供』『鉄コン筋クリート』などのSTUDIO 4℃でも労使紛争が発生しています。

飯島 働き方改革が社会全体の課題となるなか、アニメ業界の劣悪な労働環境が表面化したケースだと見ています。アニメーターの年収は100万円台で、総監督レベルでも年収600万円に満たないという調査もありました。一方、アニメ業界はアニメが好きで仕事にしている人たちが多く、交渉事が苦手なクリエイターも多い。そのため、いわゆる“やりがい搾取”が横行しているといえます。業界としても危機感を持っており、人材投資に注力する大手も出始めていますが、現状を見る限り劇的な改善には至っていません。

――今後、アニメ業界はどうなっていくと見ていますか。

飯島 現在、アニメの制作本数は年間300本を超える水準で推移していますが、この状態が長く続くとは思えません。一方、アニメ業界を維持していくためには、今の方法で仕事を回していくしかないのも事実です。少なくとも、業界として確実に利益を得られるような構造をつくり上げていくべきでしょう。

 ただ、今ではコンピュータグラフィックでの制作も進んでいます。テクノロジーの発展によって、やがて原画マンや動画マンは不要になるかもしれません。すでに、中国ではAI(人工知能)がアニメを制作するケースも出てきています。

――最近、中国のアニメ制作会社が日本の技術者を引き抜くという動きもありますが。

飯島 娯楽が少ない中国では日本のアニメが人気です。そのため、高いクオリティの作品を生み出す日本人アニメーターの技術は、成長を続ける中国アニメ業界にとっても喉から手が出るほど欲しい。日本国内にも中国資本のアニメ制作会社はありますし、人材引き抜きなどのケースは今後増えてもおかしくないと見ています。

 アニメ人材の獲得競争が活発になれば、優秀なアニメーターを引き抜かれる立場の日本アニメ産業では今後、劣化が進む可能性があります。また、中国は日本と比べ相対的に人件費が安いため、同じコストでも中国企業のほうが日本企業よりクオリティの高い作品を制作する時代が来るかもしれません。

(構成=長井雄一朗/ライター)

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