渡辺陽一郎「いちばん詳しい『人気の新車』完全ガイドシリーズ」

日産「セレナ」がミニバンの定番として売れ続ける本当の理由…購入前の要チェックポイント

日産の「セレナ」(「日産:セレナ [ SERENA ] ミニバン/ワゴン Webカタログ トップ」より)

どんなクルマなのか?

 3列のシートを備えたミニバンは、人気の高いカテゴリーです。6~8名の乗車が可能なので、2世帯で移動できます。3列目を畳むと、自転車のような大きな荷物も積めます。

 このミニバンの中でも、特に人気の高い車種が日産自動車セレナ」です。典型的なミドルサイズのミニバンで、背の高いボディによって広い室内を備えます。ハイブリッドのe-POWERも加わり、優れた燃費性能でも注目されています。

人気を得ている理由

 標準ボディが5ナンバーサイズに収まるミニバンの中で、セレナは居住性がもっとも優れています。特に3列目はライバル車に比べるとサイズに余裕があり、足元空間も広くて快適です。シートアレンジが豊富なことも特徴です。また、視界の優れた5ナンバー車なので、広い室内を備えながら運転もしやすく、さまざまな機能をバランス良く高めました。

気になる8つのポイントチェック&星取り採点

(1)居住空間の広さとシートの座り心地

★★★★★

 標準ボディは5ナンバーサイズですが、車内はとても広いです。多人数で長距離を快適に移動できます。

(2)荷物の積みやすさとシートアレンジ

★★★★★

 3列目を左右に跳ね上げると、自転車など大きな荷物も積めます。2列目を中心にシートアレンジも豊富です。

(3)視界や小回り性能など運転のしやすさ

★★★★☆

 サイドウインドーの下端が低めなので、視界は前後左右ともに良いです。小回りの利きも満足できます。

(4)加速力やカーブを曲がるときの安定性

★★★☆☆

 e-POWERは加速力に余裕がありますが、ノーマルエンジンは少しパワー不足。安定性もいま一歩です。

(5)乗り心地と内装の質感などの快適性

★★★☆☆

 16インチタイヤ装着車は、乗り心地が硬めで路上のデコボコを伝えやすいです。内装は満足できます。

(6)燃費性能とエコカー減税

★★★☆☆

 売れ筋グレードのJC08モード燃費はノーマルエンジンが15km/L、e-POWERは26.2km/Lで悪くないです。

(7)安全装備の充実度

★★★★☆

 歩行者も検知できる衝突被害軽減ブレーキ、後方の並走車両を知らせる機能などを全車に標準装着しています。

(8)価格の割安感

★★★★☆

 エアロパーツを装着した売れ筋グレードは、おおむね300万円以上ですが、それに見合う内容を備えています。

選ぶときに確かめたい3つのメリット

・トヨタ自動車「ヴォクシー」などのライバル車と比べて、3列目が快適で多人数の乗車に適します。

・ノーマルエンジン車は2列目の中央を前側にスライドさせ、中央を通路に使えます。

・e-POWERのS/ECOモードでは、アクセルペダルで速度を幅広く調節できます。

後悔しないための3つの要チェックポイント

・プラットフォームは従来型と同じで床が高く、少々乗り降りしにくいです。

・高重心のボディで安定性を得るため操舵感は鈍いです。乗り心地も硬めです。

・プロパイロットのパワーステアリングの支援制御は、少し違和感が伴います。

こんなユーザーにおすすめ

 運転のしやすさと広い室内を両立させたので、日常的な買い物から多人数乗車による長距離移動まで、幅広い用途に使えます。e-POWERの売れ筋グレードは価格が350万円前後に達しますが、燃費数値はミドルサイズミニバンでは最良です。動力性能にも余裕を持たせました。多人数で高速道路や峠道の登り坂を走ってもパワー不足を感じにくく、長距離移動でも燃料代を抑えられます。

今後のモデルチェンジ予想

 現行型の発売は2016年ですが、18年にe-POWERを加え、19年にはフロントマスクを刷新するマイナーチェンジも実施しました。今はフルモデルチェンジを行う周期が長引いており、少なくとも23年頃までは現行セレナの生産を続けます。特別仕様車の追加などはあっても、当分の間フルモデルチェンジは行いません。

最近の販売状況と安く買うための商談方法

 発売から3年以上を経過しますが、売れ筋の価格帯が300万円以上のミニバンとしては、今でも堅調に売れています。日産車の設計が全般的に古くなり、堅調に売れる車種が減ったことも原因です。セレナ+ノート+デイズ+デイズルークスの販売台数を合計すると、日産車全体の70%近くに達します。そうなるとセレナは売れ行きを落とせず、登録台数が多いのに値引きも拡大しています。また、ミニバンはライバル同士の競争も激しく、値引き額がますます増えています。

 購入時には、ライバル車のトヨタ・ヴォクシー/ノア/エスクァイア(いずれも基本的には同じ姉妹車です)、ホンダ「ステップワゴン」と値引き額や下取り車の査定額を競わせると良いでしょう。ローンを使うときには、金利の違いなどもあるため、月々の返済額を比べて判断したいです。

リセールバリュー/数年後に売却するときの価値

 ノーマルエンジンを搭載するハイウェイスターVの場合、残価設定ローンの残価率は新車時の56%に達します。月々の返済額を抑えて売れ行きを伸ばすために残価率を高めましたが、それにしても3年後で56%は好条件です(一般的には40~48%)。有利な条件で売却できると考えて良いでしょう。

これが結論!/このクルマの総合評価&コメント

★★★★☆

 セレナは多くのユーザーが思い描くミニバンのイメージにピッタリです。全高が1865mm(2WD)に達するボディは存在感が強く、室内の広さを表現しています。実際の居住性も優れ、多人数乗車や荷物の積載が得意です。

 ミドルサイズのボディは視界も良いため、裏通りや駐車場でも運転しにくく感じる心配はありません。外観デザインから各種の機能まで、ミニバンを使う人たちの気持ちを汲み取った開発が行われています。ハイブリッドのe-POWER、ハンドルやペダルの操作を軽減する運転支援機能のプロパイロットなど、先進技術を盛り込んだことも魅力です。

 その一方で、床が高く乗降性はあまり良くないです。操舵感が鈍めで乗り心地は少し硬く、エンジンノイズが耳障りといった欠点も散見されます。このあたりを試乗チェックで確認して、ライバル車とも比較した上で購入の判断をされると良いでしょう。

(文=渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト)

渡辺陽一郎/カーライフ・ジャーナリスト

1961年生まれ。神奈川大学卒業。1985年に自動車雑誌を中心に扱うアポロ出版株式会社に入社。その後、同社で複数の自動車雑誌やアウトドア雑誌を手掛け、1989年に自動車購入ガイド誌「月刊くるま選び」の編集長に。1997年にはアポロ出版株式会社の取締役も兼任。2001年6月に40歳を迎え、同月に「カーライフジャーナリスト」の肩書でフリーランスに転向。

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