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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

エルピーダを潰した元社長が副総裁就任の中国紫光集団、おそらくDRAMを製造できない

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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 ところが、上記の計画は空中分解してしまった。というのは、坂本氏が合肥市に対して、日韓台の技術者の年俸1億円(3年で3億円)を要求したからだ。サイノキングの言い分は、「もし失敗したら、250人の技術者が職を失うのだから、一生困らないだけの金額を要求するのは当然だ」というものだった。しかし、高額な年俸を合肥市が認めなかったため、この計画は頓挫してしまった。

UMCと提携したJHICC

 中国のJHICCは2016年5月、台湾のファンドリーUMCと技術提携して、先端DRAMの製造を計画した。UMCは300人規模の支援部隊を組織し、台南の工業団地「Southern Taiwan Science Park」に100人の技術者から成るR&Dチームを編成した。UMCのR&Dチームには、米マイクロン傘下の台湾DRAMメーカーInoteraの技術者やマイクロンジャパン(旧エルピーダ)の技術者が転職した模様である。

 ところが、米政府が中国のDRAMが軍事目的に使われるのではないかと危険視し、2018年10月29日に、JHICCをエンティティーリスト(EL)に追加した。ELとは、米政府が国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして指定した企業を列挙したもので、掲載された企業に物品やソフトウエア、技術を輸出するためには商務省の許可が必要となる。そのELにJHICCが追加された結果、アプライドマテリアルズ(AMAT)、ラムリサーチ(Lam)、KLAなど米国製の製造装置の輸出が禁止されてしまった。これらの製造装置がなければ、先端DRAMはつくれない。それゆえ、JHICCのDRAM製造は頓挫した。

 これに伴ってUMCのDRAM支援部隊も解散となり、約140人の技術者は配置転換や解雇になった。その上、マイクロン傘下のInotera等からUMCに転職した技術者たちは、マイクロンから機密盗用の罪で提訴された。

CXMTも頓挫する可能性が高い

 サイノキングとの提携に失敗した中国のHefei Chang Xinは、その後、LuiLi、Innotoron、CXMT(Changxin Memory Technologies)と、次々に社名を変更しながら、執念深く先端DRAMを製造しようとしている。CXMTは、マイクロン傘下のInoteraの技術者をごっそり採用した模様である。さらに、CXMTには香港に2つのR&Dチームがあり、1つはSK Hynix出身の技術者、もう1つは旧エルピーダ出身の技術者が相当数在籍しているという。

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