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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

エルピーダを潰した元社長が副総裁就任の中国紫光集団、おそらくDRAMを製造できない

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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 CXMTは各国の製造装置メーカーに対して、2017年末に導入を依頼し、2018年第1四半期に製造装置据え付けを始めた。また、ウエハメーカーやレジストなどの材料メーカーに対しては、DRAM工場が稼働する2018年第2四半期以降の供給確保を依頼した。しかし、CXMTにマイクロン傘下のInoteraからの転職者がいるとなると、CXMTもマイクロンから機密盗用で訴えられるか、米政府がELに追加して、DRAM開発も生産もできなくなる可能性が高いと言わざるを得ない(注)。

紫光集団のDRAMの展望

 ここまで中国のDRAMの経緯を見てきたが、サイノキングと提携しようとしたHefei Chang Xinの計画は中止となりUMCが技術協力するJHICCは事実上空中分解した。また、Hefei Chang XinはCXMTと社名を変更してDRAM製造に執念を見せているが、その将来展望は暗い。

 そのようななか、紫光集団がDRAM事業に参入しようとしている。紫光集団は、台湾Inoteraの元董事長Charles Kao氏をCEOに任命し、加えて中国のファンドリーSMICのC-CEOのHaijun Zhaoをスカウトしようとしている。そして、冒頭で書いた通り、旧エルピーダCEOの坂本氏を幹部に招聘し、これまで失敗続きだったDRAM事業を立ち上げようとしているわけだ。

 しかし、上記の幹部たちがDRAM技術を持っているわけではない。彼らが行うのは経営の舵取りと、優秀なDRAM技術者を掻き集めてくることである。これは果たして、うまくいくのか。マイクロン傘下のInoteraや旧エルピーダの技術者たちは、JHICCとそれに提携するUMC、さらにはサイノキングに転職して(転職しようとして)、酷い目に遭っている。優秀でまともなDRAM技術者なら、「中国にかかわるとロクなことがない」ことがよくわかっているだろう。

 ただし、紫光集団にはふんだんな資金があるから、DRAMの開発センターや量産工場を建設することはさほど難しくない。ところが、ここに製造装置を導入する段階で、米政府が米国製の製造装置の輸出許可を出すとは考えにくい。JHICCのときのようにELに追加されて、米国製装置の輸出は禁止されるだろう。

 結論を述べると、DRAM事業に参入しようとしている紫光集団には、まず日米韓台の優秀な技術者が集まらない(中国にはDRAM技術者がほとんどいない)。加えて、米国政府が輸出許可を出さない可能性が高いため、米国製の製造装置を導入できない。以上の理由から、紫光集団は、DRAMを製造できないと思われる。

(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)

注)本稿執筆後に、エレクトロニクス業界技術情報メディア「EE Times」に12月3日、Junko Yoshida氏が執筆した“ChangXin Emerging as China’s First & Only DRAM Maker”という記事が掲載された。

 記事によれば、CXMTはすでに先端DRAMを製造しているという。また、CXMTは米マイクロンなどから訴えられないように、2009年に倒産したキマンダのDRAM技術を使っている模様である。しかし、DRAMの製造には、アプライドマテリアルズ、ラムリサーチ、KLAなど米製の製造装置が必要不可欠である。CXMTは今後、DRAMの生産キャパシティを拡大していく計画であるが、米政府が米製の製造装置の輸出許可を出すかどうかが注目される。

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