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かつや、客離れ“起きず”12期連続増益の無敵経営…永久に100円引き、絶えず新商品

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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かつやの店舗(「Wikipedia」より)

 とんかつ店「かつや」が増殖している。11月末時点の国内店舗数は直営とフランチャイズチェーン(FC)を合わせて402店。1年前からは14店増えた。とんかつ業態では国内最多を誇り、国内店舗数はラーメンチェーンの「日高屋」と同程度だ。

 かつやの売りは、なんといっても安さだ。「カツ丼」は539円(税込み、以下同)とお手頃価格となっている。ほかにも、「ロースカツ定食」(759円)、「カツカレー」(715円)といった低価格のメニューがずらりと並ぶ。主要客は30~50代の男性で、平日の昼時はこうした層を中心にどこも賑わっている。

 とんかつ店といえば「とんかつ和幸」と「新宿さぼてん」が特に有名だ。両店は1000円以上のメニューが中心で、中価格帯のとんかつ店といえる。これらと比べるとかつやの価格の低さは際立っている。

 かつやの安さの秘密は、とんかつを揚げるオートフライヤーにある。衣をつけた豚肉を油の中に入れると、ベルトコンベヤーの上などを豚肉が自動的に流れて揚げられる。簡単な訓練を受けるだけで、誰でも同じレベルで仕上げることができるのだ。オペレーションが簡素化されるので、ローコスト運営が可能となり、低価格が実現できている。

 かつやを運営するのは、アークランドサービスホールディングス(HD)だ。同社は1998年にかつや1号店を神奈川県相模原市に開いた。その後、徐々に店舗網を拡大し、現在は前述の通り全国に約400店を展開するに至っている。

 同社の直近本決算である2018年12月期連結決算は、売上高が前期比15.3%増の306億円、本業のもうけを示す営業利益が9.4%増の41億円だった。07年の上場以来、11期連続の増収増益を達成した。19年12月期は売上高と営業利益ともに前期を大幅に上回る見込みで、12期連続の増収増益が確実視されている。

 かつやは定期的に値引きキャンペーンを行うので、その時はさらに安い価格で食べることができる。最近では12月6~8日の限定で4品をそれぞれ550円に値下げするキャンペーンを実施した。4品のなかで1番価格が高い「カツカレー(竹)」の定価は869円なので、319円引きだ。

 また、会計の際、次回来店時に500円以上の商品に使える「100円引き券」をもらえるのも魅力だ。割引券を使用して会計をした時にも、再び券をもらえるので、使用できる期限内に行けば、制度が終わらない限り永久的に100円引きで食事ができる。カツ丼であればワンコイン(500円)でお釣りがくる。この制度により、根強いリピーターの獲得に成功している。

 期間限定商品も人気だ。最近では、12月9日からラーメンチェーン「幸楽苑」とのコラボ商品「ラーメンコロッケとロースカツ定食」を売り出したほか、11月8日には「出汁あんかけカツ丼」、10月11日には「牛丼カツ丼」を発売。ひと月に1商品のペースで次々と期間限定の商品を投入し、顧客を飽きさせないようにしている。

ライバルが続々登場

 かつやは、こうした施策で集客を実現し、勢力を伸ばすことに成功した。ただ、最近は同業種の競合が急拡大しており、油断はできない。

 特に大きな対抗勢力として急成長しているのが、「松のや」「松乃家」だ。牛丼チェーン「松屋」を展開する松屋フーズホールディングス(HD)傘下のとんかつ店で、現在全国に190店以上を展開。店舗数は右肩上がりで増えている。

 松のや・松乃家も、かつやと同じく低価格が売りだ。「ロースかつ丼」はみそ汁付きで550円、「ロースかつ定食」も550円と格安。松屋フーズHDは、とんかつ業態を牛丼に次ぐ第2の柱にしようとしている。

 ちゃんぽん店「リンガーハット」を運営するリンガーハットも、とんかつ業態の「濱かつ」を展開しているが、同社も濱かつを第2の柱にしている。

 とんかつ店は外食市場のなかでも有望だ。調理や片付けの手間がかかる揚げ物は家庭では敬遠されるようになった。しかし、食べ物としての人気は依然として高く、外食が受け皿となっている。また、店舗でテイクアウト販売をしているところも多く、自宅で食事をする消費者の取り込みにも成功している。

 こうした需要を取り込むことで、かつやは大きく成長することができた。ただ、今後はそう簡単にはいかないだろう。かつやの成功を見てか、近年は外食大手が次々にとんかつ市場へ参入しているからだ。

 うどんチェーンの「丸亀製麺」を運営するトリドールホールディングスは、15年に「豚屋とん一」を出した。ほかにも、ファミリーレストラン「ガスト」を展開するすかいらーくホールディングスが16年に「とんから亭」、天丼チェーン「天丼てんや」がロイヤルホールディングスが昨年12月に「とんかつおりべ」、ラーメンチェーン「日高屋」のハイデイ日高も今年1月に「とんかつ日高」をそれぞれ出店。競争は激化している。

 こうした状況もあり、かつやの最近の既存店売上高は思わしくない。17年12月期まで6年連続でプラス成長だったが、18年12月期は前期比0.4%減とマイナス成長に陥った。19年1~11月期も前年同期比1.2%減と苦戦している。

 とはいえ、大幅減ではないので、今のところ大きな問題ではないだろう。注意を払いつつ、新規出店を進めて勢力を拡大させることが重要だ。飽和感が漂う牛丼などと違い、とんかつはまだまだ伸び代がある。競合に先んじるかたちで空白地を埋めることが重要となる。先行優位性を生かし、競争を制したいところだ。

 アークランドサービスHDの19年12月期第3四半期(19年1~9月)の連結業績は、新規出店効果もあって好調を保っている。売上高は前年同期比9.7%増の243億円、営業利益は10.1%増の33億円だった。今後、どこまで勢力を拡大できるかに関心が集まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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