業務スーパー、株式時価総額で三越伊勢丹を上回る…激安実現のため“極限の努力”

業務スーパーの店舗(「Wikipedia」より/おぉたむすねィく探検隊)

業務スーパー」を展開する神戸物産の株価は連日続伸した。12月11日には3630円まで上昇した。10月末に1株を2株に株式分割しており、株式分割考慮後の実質的な上場来高値を更新した。みずほ証券は4200円の目標株価を打ち出している。

 11月末にあたる11月29日の終値の株式時価総額は4644億円。百貨店大手のJ.フロントリテイリング(3890億円)、三越伊勢丹ホールディングス(3860億円)、高島屋(2296億円)を大きく上回る。

 神戸物産はタピオカブームで恩恵を受けた代表銘柄だ。業務スーパーでタピオカをプライベートブランド(PB)商品として投入したのは4年ほど前のこと。しばらくは売上に目立った動きはなかったものの、若者を中心にタピオカの人気が高まると、メディアで次々と取り上げられた。今ではタピオカ目当てに、かつてはほとんど見かけなかった女子高生が来店するようになった。

 神戸物産はタピオカブームが追い風になったが、株式市場が注目しているのはディスカウントストアという業態。消費増税による家計負担の増加が見込まれるなか、他の小売業に比べて、業務スーパーに優位性があると見ている。神戸物産は消費増税後の“勝ち組”企業にカウントされている。

 10月の単体業績(速報値)では、売上高が前年同月比15.6%増の260億円となった。消費増税後、駆け込み需要の反動減となった小売企業が多いなかで、9月(16.7%増)までと同様に2ケタの高い伸び率を維持した。

 12月13日に発表した2019年10月期の連結決算は、純利益が前の期(18年10月期)に比べて16%増の120億円だった。利益率の高いPB商品の販売が好調。新規出店による店舗の増加も寄与した。売上高は同12%増の2996億円。同日記者会見した沼田博和社長は「消費増税後も販売は堅調」と、先行きに対して自信を示した。

 2020年10月期の純利益は19年同期比11%増の133億円を見込む。新規出店は30店を計画。店舗増がプラスに働く。売上高は同4%増の3118億円の予定だ。

死角はタピオカブームの終焉

 業務スーパーは2月17日、テレビ番組『坂上&指原のつぶれない店』(TBS系)内で「客殺到!! 超大量なのにナゼか超激安!? 業務スーパーSP」と題して紹介された。番組ではやきそばが1キログラム138円、鶏肉2キログラム880円など、文字通り「超大量なのに超激安」で販売している様子を伝えた。

 激安を実現できる理由は、自社・グループ工場で製造したPB商品が主力だからである。国内外の生産子会社は15社、22工場(うち中国2工場)。これに加えて海外の約350の協力工場から商品を調達している。輸入先のうち半分は中国からで、残り半分は欧米、ASEAN、中南米地域からの直輸入。輸入先は40カ国に上り、ここ数年は中国以外の国から輸入を増やしている。2019年の最大のヒット商品となったタピオカドリンク(ミルクティー)は台湾からの輸入である。

 SPA(製造小売業)はカジュアル衣料ユニクロを運営するファーストリテイリングや、家具のニトリホールディングスが有名だが、神戸物産も食の製販一体企業である。

 今後の課題は、タピオカブームがどこまで続くのかという点だ。PB商品は好調だが、タピオカブームが収束した後に、消費者を引きつける新たなPB商品を生み出すことができるのかという点だろう。消費増税後、消費者の足は激安店へ向かっている。店舗を拡大する絶好のチャンスが訪れたわけだが、業績が絶好調の時にこそ危機の芽が大きくなるもの。油断は禁物である。

(文=編集部)

【続報】

 神戸物産の株価は12月16日に3665円まで上昇。終値は3650円(210円高)。野村證券は目標株価を3450円から4470円に引き上げた。

 

BusinessJournal編集部

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