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木村隆志「現代放送のミカタ」

『いだてん』最終回、低視聴率の裏で熱狂的ファンを生んだ理由…数年後に評価される名作か

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト
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 それでも『いだてん』は、スポーツとオリンピックの普及と進化、戦争の無常と戦後の復興、女性の自由と自立などの多彩なテーマを丹念に描いてきた。とりわけ第2部は、人見絹枝(菅原小春)の激走とスピーチ、前畑秀子(上白石萌歌)の苦悩と力泳、「フジヤマのトビウオ」こと古橋廣之進(北島康介)の「気持ちいいじゃんねー」、「東洋の魔女」ことバレーボール日本代表と大松博文監督(徳井義実)の絆など、日本スポーツ史に残る伝説的アスリートの名シーンを連発。

 彼らのオリンピックに懸ける思い、知られざる苦悩、世間への悔しさや怒り、ようやくつかんだ歓喜の瞬間など随所に感情があふれ、ストレートな感動として胸に押し寄せてくる。アスリートを全力で支援する田畑らの姿も含め、これほど濃密な人間ドラマが詰まった作品はなかなかお目にかかれない。

『新選組!』を思い出す賛否両論の名作

 もうひとつ、『いだてん』を語る上で忘れていけないのは、「日本の歴史を描く」という大河ドラマとしての顔。オリンピックをめぐる史実はもちろん、関東大震災、満州事変、五・一五事件、二・二六事件、日中戦争、太平洋戦争などの歴史を織り交ぜ、あのヒトラーやムッソリーニらも登場した。

 歴史を追う大河ドラマ本来の楽しみがありながらも、視聴率が低迷したことで「人気のない近代史の物語だから」という声が広がっている。さらに言えば、「人や状況がめまぐるしく入れ替わり、複雑でわかりづらい」「戦争やクーデターなど、現在にも通じる生々しい怖さを感じてしまう」という声も少なくない。

 これは、裏を返せば「多くの視聴者が『人や状況がシンプルでわかりやすい』『怖さがなく安心して楽しめる』ものを求めている」ことの表れとも言える。今秋の新作ドラマで視聴率トップ争いをしている『グランメゾン東京』(TBS系)と『同期のサクラ』(日本テレビ系)は、どちらも「シンプルでわかりやすい」「怖さがなく安心して楽しめる」娯楽作だ。

 現時点では『いだてん』よりも『グランメゾン東京』『同期のサクラ』に関心を寄せる人が多いのは間違いないが、熱狂度や思い入れの深さは別。『いだてん』は見ている人の大半が深い愛情を表しているだけに、数年後に話題になり「名作だった」と言われるのかもしれない。

「低視聴率だが、熱狂的なファンが多い」という賛否両論の状態は、2004年の『新選組!』に似ている。同作は放送後にDVDがバカ売れしたほか、視聴者からの待望論で約1年後の正月に続編のスペシャルドラマが放送された。来年、東京オリンピックが行われることを踏まえても、『いだてん』も似た現象を起こす可能性は十分あり得るだろう。

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