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片山修「ずだぶくろ経営論」

パナソニックを蝕む「テスラ・リスク」…よぎる「プラズマテレビ過剰投資の悪夢」

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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 少なくとも、かつてのような“運命共同体”ではなくなっているのではないだろうか。いや、それ以上に、パナソニックにとっての誤算は、肝心のEV市場が思うほどには拡大していないことだろう。実際、全世界のEVの販売台数はいまだ年間200万台に満たない。EVの先頭を走る日産「リーフ」にしても、初代発売の10年12月から19年1月までの9年間の販売台数は、累計11万8000台にすぎない。

 なぜ、EVは普及が進まないのか。買う側にしてみれば、購入に二の足を踏むもっとも大きな理由は車体価格の高さだろう。加えて、航続距離や充電インフラにも課題が残る。

 EVの最大市場の中国でも、EVを取り巻く環境は厳しくなっている。今年6月下旬、EVの購入補助金が大幅にカットされるや、中国でのEVの販売台数は一気に減速した。EV最大手のBYDをはじめとするメーカーの業績も低調だ。また、中国での相次ぐ車両火災も、EV離れに拍車をかけている。18年には40件、今年に入ってからも少なくとも30件のEVの発火事故が起きたと報じられた。EVに対する消費者の不安は高まっている。

 革新的な掃除機で知られる英ダイソンは、この10月、EVの開発の取りやめを発表した。開発費がかさみ、事業の継続が難しくなったからだ。実際、EVで収益を上げている企業はいまのところ皆無である。

 振り返ってみれば、パナソニックは自動車産業が直面する100年に一度の大変革期、すなわち「CASE」を好機として、本格的に自動車分野に参入した。なかでも期待されたのが、EV市場の拡大を前提にした車載用電池の売り上げ増である。ところが、EV市場は思うように伸びていない。と同時に、パナソニックの車載電池事業も、先行き不透明感が漂っている。

テスラ一本足打法からの脱却

 ただ、救いはパナソニックにとって力強い“助っ人”があらわれたことだ。トヨタ自動車である。パナソニックとトヨタは17年12月、車載用角型電池事業の協業検討で合意した。

 トヨタは2025年にハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV、燃料電池車の電動車両の年間販売台数を550万台とする目標を掲げている。つまり、EV市場が伸び悩むなかでも、トヨタと組むことで、ハイブリッド車用の安定した車載電池の供給先を確保できる。テスラ一本足打法からの脱却だ。

「世界一の電池をつくる」と津賀氏は記者会見の席上、自信を示した。現在、パナソニックとトヨタは、2020年春の事業開始を目指して合弁会社の設立準備中だ。津賀氏は11月22日、次のように述べた。

「電気自動車は非常に難しいビジネス。だからトヨタさんといっしょにやることが大事なんです」

 パナソニックがトヨタと組む最大のメリットは、電池のボリュームが確保できることだ。また、共同開発した製品は、トヨタ以外の自動車メーカーへの販売も視野に入れる。

 パナソニックとトヨタはまた、トヨタが20年代前半までの実用化を目指す全固体電池の共同開発を進めている。むろん、トヨタの車載電池の調達先はパナソニック独占ではない。現にこの7月、トヨタは世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)と包括提携した。CATLは、電池の供給だけでなく、開発の領域まで踏み込む。パナソニックにとっては強力なライバルといえよう。

 さて、問題はテスラである。このままいくと、テスラ向けの車載事業は、パナソニックの次なる成長の軸となるどころか“お荷物”になりかねないだろう。車載事業はすでに、成長の柱から外され「再挑戦事業」となったのは、その証か。テスラが致命傷にならないためにも、社長就任8年目に入った津賀体制は、いまや大きな決断を迫られるところまで追い込まれているように思われる。

 パナソニックは18年、創業100周年の節目を迎えたが、しかし、次の100年の姿は、依然として見えない。テスラは別として、車載事業に成長を懸けるのであれば、いま一度、強力なチャレンジが求められるのである。

(文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)

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