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デサント、利益9割減ショック…韓国不買に“悠長な姿勢”、迅速対応のユニクロと真逆

文=編集部
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[デサント] SKY LO SKY LO(サイト「Amazon」より)

 衝撃的なニュースだった。財務省が発表した貿易統計の確報によると、韓国向けビールの輸出が10月は「0円」となった。韓国で起きている日本製品の不買運動の結果である。日本のビールメーカーにとって、韓国は最大の輸出先だった。韓国内でも日本製ビールは常に外国産ビールのトップを占めてきた。

 それが今年7月、日本製品の不買運動は食品や自動車などに広がった。アサヒグループホールディングスは2019年12月期の連結業績予想を下方修正。韓国での日本ビール不買運動が影響した。国際事業のうち韓国を含む部門の事業利益予想を75%減の5億円に引き下げた。アサヒは、18年まで8年連続で韓国内での輸入ビールシェア首位だったが、赤信号が灯った。

 ユニクロの製品も韓国で不買運動のやり玉にあがった。誰もが知っているメイド・イン・ジャパンの代表ブランドだ。ファーストリテイリングの韓国のユニクロ事業の売上収益は18年8月期には約1400億円で増収増益だったが、19年8月期は減収減益と説明するだけで、数字は公表しなかった。好調のときには数字を出すのに、悪くなると数字を出さないと、韓国メディアに皮肉られた。

 ユニクロは巻き返しに出た。韓国ユニクロは11月15日から21日まで、15周年記念と銘打ってヒートテック10万着を準備し、買い物客に無料でプレゼントするイベントを実施した。日本製品不買運動の活動家がインターネットで批判したが、「開店前から行列ができるほど大盛況だった」と米系メディアが伝えた。

 日韓の関係悪化は訪日観光にも及んだ。日本を訪れる韓国人観光客は8月が前年同月比48%減、9月58%減、10月65%減と、日を追うように落ち込んだ。昨年12月の韓国の人たちの人気の旅行地は大阪が1位。2位が福岡と日本だったが、今年は日本の各地は圏外に押し出された。JR九州は日韓関係の悪化で、福岡と韓国・釜山を結ぶ高速船の利用客が大幅に減少。韓国人の利用客は7割減った。

日韓関係悪化で大きなダメージ

 不買運動の影響が最も大きかったのがスポーツ用品のデサントだった。韓国はデサントの売り上げの約半分を占める主力市場だ。

 デサントは2020年3月期の連結業績予想を下方修正した。売上高は1440億円から1308億円(前期比8.2%減)、営業利益は80億円から11億円(同86.1%減)、純利益は53億円から7億円(同82.3%減)にそれぞれ引き下げた。利益の落ち込みは半端ではない。韓国法人デサントコリアが、7月以降の日韓関係の悪化による不買運動の影響をモロに受けた。韓国ではデサント製品のほか、水着のアリーナ、ゴルフのマンシングウェアなど5ブランドを展開。韓国事業は営業利益の大半を稼ぐ生命線なのである。

 6月に就任した伊藤忠商事出身の小関秀一社長は11月6日、大阪市内で開いた決算説明会で「不買運動の影響で7~9月の韓国事業の売上高は前年同期比で約3割減った」と明かした。気温が下がる11月、12月は高価格帯のダウンコートなどが売れるかき入れ時となるが、不買の影響で苦戦することは避けられない。

 韓国子会社の決算は12月期。3月期決算のデサント本体と3カ月のズレがある。デサントの4~9月期決算には、7月以降の韓国事業の落ち込みは反映されていない。韓国子会社の決算が閉まる12月以降、「現地での対策を考えたい」としている。ユニクロのファーストリテイリングに比べて、実に悠長である。

「小関さんは(伊藤忠の)岡藤正広会長兼CEOの熱烈な信奉者。同じ繊維出身だ。平時なら良かったが、いわば、“戦時”の経営のカジ取りは難しいだろう」(伊藤忠の元役員)

 問題は韓国だけではない。国内でもアパレルを中心に競合ブランドに押され、4~9月期の国内事業の営業利益は7億9500万円と22%減った。「国内事業のたて直しを進めていた矢先に屋台骨の韓国事業が大打撃を受けた」(小関社長)。

3つの難問を抱えて越年

 デサントをめぐっては、創業家出身の石本雅敏社長(当時)と筆頭株主の伊藤忠が対立。“韓国一本足打法”はリスクが高すぎるとして、中国事業の拡大を求める伊藤忠に、「韓国で成功した」と自負する石本社長が反発した。

 18年夏に伊藤忠がデサント株を買い増したことを受け両社の対立が表面化。伊藤忠が敵対的TOB(株式公開買い付け)に踏み切ってデサント株の4割を取得。デサントは6月、創業家の石本雅敏氏が社長を退き、後任に伊藤忠出身の小関秀一氏が就いたという経緯がある。デサントは国内の敵対的TOBの初の成功例ともてはやされた。

 小関新体制は22年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営をまとめた。筆頭株主である伊藤忠と連携し、伊藤忠が強みを持つ中国事業を強化することなどを柱としている。中国事業が近い将来、日本や韓国を超える売上規模になると想定した。

 中国市場では、現在約130店を展開するデサントブランドを扱う店を1000店に増やす。19年3月期に78億円だった中国事業の売上高を、将来的に1000億円に引き上げる計画だ。かなりの大風呂敷を広げた。

 だが、中国事業は合弁事業のため、デサント本体の決算には持分法適用利益しか反映されない。中国事業が脱・韓国事業の特効薬にはなりそうにもないのだ。韓国事業が失速した。日本事業の立て直し、中国事業の拡大という、3つの難問を抱えて越年する。

 岡藤会長が太陽なら、小関氏は月。太陽なくして自力で輝くことができるのか。

(文=編集部)

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