一般論ですが、安倍晋三総理や菅義偉官房長官、北村滋国家安全保障局長(事件当時は内閣情報官)、警察庁の中村格長官官房長など今回の事件で取りざたされている政府要人に対して、山口氏が直接連絡を取る必要なんてなかったと思っています。

 政治家や政治記者が誰かをメッセンジャーにするということはよくあります。別のジャーナリストか経済関係者などに、“(山口氏の)近況を伝えること”を頼む。その第3者が、政府関係者に対して世間話風に『山口君がトラブルに巻き込まれてしまったみたいです。彼は良い記者だし、このまま犯罪者にするのは残念です』などと伝えればいい。あとは話の受け手がどのように解釈するのかだけです。

 首相官邸や政治家、マスコミの政治部の禅問答のような対話や取材は今に始まったわけではありません。仮に山口氏と官邸の間になんらかの阿吽の呼吸があって何かが動いたとしても、『(当人たちは)何も言っていない』『何も頼んでいない』ということは多々あり得ます。

 結局は記者倫理の話です。山口氏が不偏不党な記者だったのかどうか。取材相手や伊藤さんを含むさまざまな関係者に対して、ひとりの人間として紳士的かつ適切な対応をしてきたのかどうか。事件の違法性の有無もさることながら、その点が疑問だらけだからこそ、山口氏に対する疑惑が尽きないわけです」

「日本の秘められた恥」

 日本であまり注目を集めなかった英BBCのドキュメンタリーが、再注目されている。番組名は『日本の秘められた恥』。16年6月28日に放送された。伊藤さんにフォーカスした作品だ。

 番組では、山口氏が事件当時、TBSのワシントン支局長で、プロデューサー職を伊藤さんに用意するなどと言って夕食に誘い、泥酔している伊藤さんに対して性行為に及んだ経緯を説明。山口氏と安倍晋三首相との関係や、首相官邸の介入の可能性に言及しつつ、事件当時の記憶に苦しむ伊藤さんの姿を赤裸々に描いた。山口氏の「伊藤氏が泥酔していたため仕方なく宿泊先のホテルへ招いた」「性行為はあったが合意の上だった」という主張も伝えた。

 BBCや米CNNなど海外メディアはこの問題を積極的に報道してきた。一方で、東京地裁の判決を経て、当初は及び腰だった日本の主だった新聞社やテレビ局も大きくクローズアップして報じつつある。明らかに日本のマスコミが出遅れた感は否めない。それはなぜなのか。いずれにせよ「日本の秘められた恥」が世界中に知れ渡ったことに変わりはない。

(文=編集部)

 

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