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体育会系男子、経営学修士を取得し、介護業界を変革す!【後編】

介護事業はオワコンではない!群馬の若きMBAホルダーが介護業者を3倍に成長させたワケ

文=宮下公美子/介護ライター
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対話を繰り返して自分たちの“チーム”を強くする

 すべて計画通り、順調に事を運んできたように見える八木さんだが、実践の過程では大きな反省点もある。事業計画を示し、それまで一度も実施していなかった人事異動などさまざまな施策を打ち出した際、1年間で10名あまりの職員の退職者を出したことは、今も悔やまれると語る。

「開設以来、異動なしで育ってきた職員から、なぜ定期異動が必要なのかなど、反発があったんです。反発して退職する職員が出ることを予想し、すでに欠員補充のため新卒採用も始めていました。しかし、反発する職員にはもっと丁寧にビジョンの説明をするべきだった。これは大きな反省点です。わかってもらえるまできちんと伝えていれば、辞めずに残ってくれた職員もいたかもしれないと、今は思います」

 大学時代、八木さんは指導者がいない体育会ソフトボール部に在籍していた。指導を受けられない分、どうすれば強くなれるか、常に部員同士で話し合ってきた。

「介護事業も部活と同じで、大切なのは対話です。自分たちの“チーム”を強くするためにどうすればいいか。それをみんなで話し合っていくことが必要です」

 この世の中は、人間関係しかない、と八木さんは言う。

「数字やエビデンスは大事ですが、もっと大事なのは人とのかかわりです。数字や知識だけで取り組んでは、血の通わないものになってしまう。それでは人は動かせません」

 収益アップを第一の目的にしない八木さんの原点は、ここにある。

 この仕事をするようになって、地域の人に見られている、と強く感じるようになった、と八木さんは言う。そして、地域に根ざす企業として、地域に何かを返していくことが必要だと考えるようになった、とも。

「地域社会のなかで、なくてはならない存在になりたい。今はそう思います。ただ必要なサービスを提供するということだけでなく、あそこに就職できてよかった、と思ってもらえるような存在に。地域に貢献していくことが、結局、自分たちに返ってくるのだと気づきました」

 緻密な分析によって隙のない論理を組み立てる一方で、細やかな目配りと丁寧な対話で、組織に、サービスに、血を通わせる。これからも、MBAホルダーの知識と人間力の発揮が、「花みづきグループ」をさらに強い組織に育てていくだろう。

(文=宮下公美子/介護ライター)

●宮下公美子(みやした・くみこ)
高齢者介護を中心に、地域づくり、認知症ケア、介護職へのハラスメント等について取材する介護福祉ライター。社会福祉士として認知症を持つ高齢者の成年後見人、公認心理師・臨床心理士として神経内科クリニックの心理士なども務める。著書に『埼玉・和光市の高齢者が介護保険を“卒業”できる理由』『多職種連携から統合へ向かう地域包括ケア』(いずれもメディカ出版)、共著に『地域包括ケアサクセスガイド』(メディカ出版)、『医療・介護・福祉の地域ネットワークづくり事例集』(素朴社)などがある。

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