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日産、新体制が1カ月で崩壊…経営再建の中心人物が“見放し”電撃移籍、人材流出の予兆

文=河村靖史/ジャーナリスト
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12月2日、日産の会見で握手する内田社長(左)と関副COO(写真:つのだよしお/アフロ)

 12月1日付けで新しい経営体制が発足したばかりの日産自動車で、再び問題が浮上した。日産のナンバー3となった関潤副COO(最高執行責任者)が日産を退任し、日本電産の社長就任含みで同社に入社する。

 日産のカルロス・ゴーン元会長が逮捕されてから、アライアンス相手のルノーや、ルノーの大株主であるフランス政府の介入など、多くの問題を乗り越えて、やっと新体制が発足。業績立て直しに本腰を入れて取り組もうとした矢先の出来事に、経営陣も従業員も動揺の色を隠せない。日産の指名委員会が今後、関氏の後任について検討する予定だが、関氏を副COOに任命した指名委員会を批判する声も高まっている。

「私とCOOのグプタ、副COOの関を柱とした経営体制で議論を尽くして事業運営にあたっていく」

 12月1日付けで日産の社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した内田誠氏は2日、横浜市にある日産グローバル本社で記者会見し、COOに就任したアシュワニ・グプタ氏、副COOに就任した関氏とともに、3頭体制で日産の経営立て直しに当たることを高らかに宣言した。しかし、それから約3週間後の12月25日、日産はナンバー3の関氏から辞任して退社する申し出があり、これを受け入れたと発表した。関氏は日本電産に次期社長含みで移籍する。

 内田氏、グプタ氏、関氏の3人によるトロイカ体制での経営を決めたのは、同社の指名委員会だ。ゴーン氏を追放した、当時社長兼CEOだった西川廣人氏が自身も不正な報酬を受け取っていたことが発覚したことから、取締役会が辞任を勧告、9月16日付けで辞任した。これを受けて日産の指名委員会は後任の人選を進めた。社外を含めて約100人の候補者のなかからヒアリングなどを実施して10人程度に絞り、10月末をメドにトップを選別することにしていた。

 3氏とも候補者として名前が挙がっていたが、指名委員会は最終的にルノーとの経営統合に否定的だった西川氏に近い関氏を退け、バランスを重視して内田氏をトップに決めた。ただ、ゴーン元会長に権力が集中していたことが不正につながったとの反省や、日産での経験が浅い内田氏に不安があったことから、日産を熟知している関氏が補佐するかっこうで、3頭体制で経営していくことにした。

再び崩れるルノーとのバランス

 しかし、この体制に関氏が不満を抱いていたのは間違いない。関氏は防衛大学卒業後、日産に入社した技術者で、3人のなかでただ一人のプロパーだ。中国の合弁会社の東風汽車の総裁として日産の中国事業の成長を主導した実績が評価され、2018年にはアライアンスの生産技術責任者に抜擢された。ゴーン氏を追放したあとの今年5月にはパフォーマンスリカバリー担当となって、人員削減などのリストラ策を含む業績回復プランをまとめるなど、経営の中枢に登りつめつつあった。

 一方のトップに就任した内田氏は日商岩井(現双日)出身で、日産に入社したのは03年。関氏の5歳下で、社長兼CEOに就任する前は東風汽車の総裁で、関氏の後任と、いわば「格下」だ。関氏の上司に当たるグプタ氏は関氏の9歳も年下で、しかもルノー出身だ。将来的にも「日産のトップになれる可能性がゼロの関氏が、ほかにいい話があれば惹かれるのは当然」(業界関係者)と、関氏の心情に理解を示す声がある。

 一方で、じっくりヒアリングして日産の経営を立て直す体制を決定したはずなのに、1カ月も持たなかったことから、指名委員会に対して「人を見る目が節穴。日産のことが何もわかっていないのでは」と批判する声が挙がっている。

 日産の指名委員会は、3頭体制で運営していくことを打ち出し「あとには引けない」ことから、関氏の後任は空席とせず、人選を進める方針。日産は2月に臨時株主総会を開いて、内田氏、グプタ氏、関氏、ルノーが推薦するピエール・フルーリォ氏の4人を取締役に選任する予定だった。関氏の後任を臨時株主総会までに選定できるのかは不透明で、できなければルノーとのバランスが崩れることが懸念される。

優秀な社員が離反していくリスク

 それだけではない。日産は新型車の投入が滞っていることなどから、グローバルで販売が低迷しており、業績も低迷している。関氏は12月にパフォーマンスリカバリー担当に加え、グローバル商品企画やグローバルプログラムマネジメント、ニューモビリティサービスなどを担当しており、新型車投入や販売体制を見直して、日産の経営立て直しを主導する役割を担っていた。関氏の急な退場は、日産の経営回復プランにも影響が及ぶのは避けられない状況だ。

 トップ就任の記者会見で「ONE TEAM」と訴えて生まれ変わった日産をアピールした内田社長。プロパーである関氏が見切りをつけたこともあって、今後、優秀な社員が離反していくリスクもあり、内田・新体制での経営再建の道のりは、早くも暗礁に乗り上げたかっこうだ。

(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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