ビジネスジャーナル > ライフニュース > 線維筋痛症、背景に日本人の低体温化
NEW
石原結實「医療の常識を疑え!病気にならないための生き方」

八木亜希子さん発症の線維筋痛症、背景に“日本人の低体温化”…塩分制限や食事も原因

文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士
八木亜希子さん発症の線維筋痛症、背景に“日本人の低体温化”…塩分制限や食事も原因の画像1
「フォニックス HP」より

 フリーアナウンサーの八木亜希子さんが「線維筋痛症」であることを発表し、しばらく休養されるという。この病名を初めて耳にする方もいらっしゃると思うが、日本では約200万人もの人がこの病気で苦しんでいるとされ、しかも原因不明というのだから、事は穏やかではない。2017年、アメリカの歌手レディー・ガガが同病であることをカミングアウトしている。

 線維筋痛症は、「手足の関節や筋肉などの痛み、ときに腰痛など体のありとあらゆるところに激しい痛みが生じ、それが原因で倦怠感、不眠、うつ病などを併発する難病」というのが、西洋医学的な見解である。原因としては「極度の疲労や、病気、ケガなど心身へのストレスが引き金になる」とされ、「ゆっくりとした休息や鎮痛剤による対症療法しか治療法はない」という。男性より女性の患者数が圧倒的に多く(8:2)、30歳代で約12%、40~50代で約23%と更年期に入ると増加する。

 女性は男性に比べて体温が低く、40歳以上の更年期にはさらに体温が下がることを鑑みると、線維筋痛症の背景には「低体温(冷え)」があると考えられる。リウマチによる筋肉痛や頭痛、腰痛などの持病がある人は、「寒い日や夏でも冷房に入ると痛みが増強する」とおっしゃる。つまり冷え(低体温)は痛みの一大要因となる。

 腹痛のときはお腹に、胸痛や腰痛のときには胸や腰に手のひらを当てるのが我々の本能的なしぐさで、これは手のひらで患部を温めて痛みを和らげようとしているわけだ。この「お手当」こそが「治療」の語源となった。

 日本人の脇の下の平均体温が、1957(昭和32)年には36.9℃もあったという。それが現代日本人の平均体温は35.8~36.2℃くらいで、60年前と比べ1℃近く低体温化している。つまり線維筋痛症の背景には、「日本人の低体温化」が存在しているといってよい。

「低体温化」の原因

「低体温化」の主な原因は、以下のとおり。

(1)筋肉運動・労働の不足

 交通機関の発達、家電製品の普及により、ウォーキングや筋肉運動の量が激減した。体温の約40%は筋肉で産生される。

(2)極端な塩分の摂取制限

 河川の水は「0℃」で凍るが、海水は「-2℃」で凍る。塩は2℃も体を温める力がある。1950年代の日本人の塩分摂取量は南の鹿児島で「14g/日」、北に行くほど多くなり、青森で「28g/日」であった。塩分を多く摂る地域に高血圧、脳出血が多いということで減塩運動が起こり、今や「1日に10g」どころか「8g以下」が望ましいという指導がなされている。

(3)水分の摂取過剰

 日本人の死因の2位の心疾患(約20万人)と、4位の脳血管疾患(約11万人)がいずれも「血栓症」のため、血液をサラサラにするために「1日に2リットルの水を飲め」とか「こまめに水分を摂れ」などと推奨されている。雨に濡れると体が冷えるし、「冷却水」という言葉もある。飲みたくもない水を無理に摂ると体が冷える。

(4)ストレスフルな生活

 心身に負担(ストレス)がかかると副腎よりアドレナリンやコルチゾールが分泌され、血管が収縮して血流が悪くなり、長く続くと体が冷える。

(5)シャワーで済ませる入浴

 湯船につかる「入浴」は、体温が1~2℃上昇し、入浴後も数時間それが続く。シャワーだけで済ます入浴習慣が多くなっているのも低体温化の原因のひとつ。

(6)体を冷やす食物の過剰摂取

 西洋医学、栄養学では食物の価値は五大栄養素と含有カロリーで決められる。食べると「体を冷やす食物(陰性食物)」や「温める食物(陽性食物)」を区別して、健康増進や病気の治療に役立ててきた漢方医学的見地からすると、現代人は体を冷やす食物を多く摂る傾向にあることも、低体温化の要因である。「体を冷やす食物」は外見が「青・白・緑」の冷えで、「温める食物」は「赤・黒・橙」の暖色と覚えると理解しやすい。

八木亜希子さん発症の線維筋痛症、背景に“日本人の低体温化”…塩分制限や食事も原因の画像2

 なお、体を冷やす食物も「熱」「塩」「発酵」によって温める食物に変化する。

・牛乳(白)→熱・発酵→チーズ(黄)

・大豆(黄白)→熱・塩・発酵→味噌(茶)、醤油(黒)、納豆(茶)

・大根(白)→塩・圧力・天日→たくあん(黄)、切り干し大根(黄)

・緑茶(緑)→熱・発酵→紅茶(赤)、ウーロン茶(茶)

 よって、「線維筋痛症」の「予防・改善」には(1)~(6)の反対の生活をするよう努力することだ。最近は約60℃のやや低温のサウナに15分くらい入って体を温めて、「線維筋痛症」を治療している病院もあるようだが、痛みのメカニズムからするとこれは正鵠を射ている。

 よって、線維筋痛症の予防・改善には日頃から入浴、サウナ、岩盤浴で体を温められるとよい。先日診療した線維筋痛症の患者さんが次のようにおっしゃっていたが、その理由は自明であろう。

(1)風邪をひいて発熱すると不思議と痛みがなくなる

(2)入浴中も痛みが軽くなる

(3)親しい友人と話しているときも痛みが軽くなる(ストレスが取れて血行が良くなる)

(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業後、血液内科を専攻。「白血球の働きと食物・運動の関係」について研究し、同大学大学院博士課程修了。スイスの自然療法病院B・ベンナー・クリニックや、モスクワの断食療法病院でガンをはじめとする種々の病気、自然療法を勉強。コーカサス地方(ジョージア共和国)の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。現在は東京で漢方薬処方をするクリニックを開く傍ら、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。著書はベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)、『「食べない」健康法』(PHP文庫)、『「体を温める」と病気は必ず治る』(三笠書房)、石原慎太郎氏との共著『老いを生きる自信』(PHP文庫)、『コロナは恐くない 怖いのはあなたの「血の汚れ」だ』など、330冊以上にのぼる。著書は韓国、中国、台湾、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、タイなど世界各国で合計100冊以上翻訳出版されている。1995~2008年まで、日本テレビ系「おもいッきりテレビ」へのレギュラー出演など、テレビ、ラジオ、講演などでも活躍中。先祖は代々、鉄砲伝来で有名な種子島藩の御殿医。

八木亜希子さん発症の線維筋痛症、背景に“日本人の低体温化”…塩分制限や食事も原因のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!