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小泉環境相に世界から批判…安倍政権、「石炭火力」増設・輸出推進で世界の潮流に逆行

文=北沢栄/ジャーナリスト
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第4次安倍再改造内閣が発足で会見する小泉進次郎環境相(ロイター/アフロ)

 国際世論の高鳴る潮流に背を向ける安倍晋三政権の“唯我独走”ぶりが際立ってきた。反核・反原発、地球温暖化、国際貢献活動への冷ややかな反応は、内向きで鎖国的な政権の体質を物語る。

 ローマ・カトリック教会のフランシス教皇が訪日した11月下旬。教皇は東京電力福島第一原発事故の被災者と面会した際、「将来のエネルギー源について、勇気ある重大な決断が必要だ」と述べた。原発事故を念頭に、原子力エネルギー政策の見直しを訴えたのだ。日本政府は、エネルギー基本計画で2030年度の電源構成に占める原発の割合を「20~22%にする」目標を掲げ続ける。事故はなかったかのようだ。国内の世論調査のすべてで人々の過半数が原発に不安を表明し、再稼働に同意していないのに政権は動かない。

 ローマ教皇はこれに先立つ長崎、広島の爆心地でのスピーチで「核兵器から解放された平和な世界は、あらゆる場所で数え切れない人が熱望している」「戦争のために原子力を使用することは、犯罪以外の何ものでもない」と訴えた。一方、教皇は安倍首相とも会談した。安倍首相からは「日本とバチカンは共に、平和、核兵器のない世界の実現、貧困撲滅、人権、環境等を重視するパートナーである」旨の発言が返ったが、具体的な原子力政策への言及はなかった。中身なき発言というほかない。

 12月4日、戦乱が続くアフガニスタンの僻地で農業用水路の整備や医療に力を尽くしてきた中村哲医師が銃撃され、殺害された。国内外から犯行を非難する声、追悼する声が相次いだ。国連も特別に声明を出し、「アフガニスタンでもっとも弱い立場にいる人たちを助けることに人生の大半を捧げた人間に対する無分別な暴力行為だ」と中村さんの功績を称え、犯行を強く非難した。

 折から、さいたま市で開かれていた来日中のロックバンド「U2」コンサート。ボーカルのボノさんの呼びかけを受け、観客がスマホのライトをキャンドル代わりに灯し、追悼の曲が歌われた。ツイッター上には日本語、英語などに加えアラビア語でも「なかむら」の音を表すハッシュタグ(#)を付けた追悼の声が寄せられた。

 アフガニスタンでは、現地語で中村さんの死を悼む数多くのメッセージがSNS上に投稿された。なかには「街や通りに『なかむら』という名前を付けたい」という声もあった。首都カブールの空港でアフガニスタン政府の追悼式が行われ、アシュラフ・ガニ大統領自らが軍兵士らと棺を担いで帰国を見送った。ところが、安倍政権の反応は冷ややかでつれなかった。

 12月8日夕、中村さんの亡骸が成田空港に到着したとき、安倍首相も茂木敏充外相もほかの閣僚も誰一人として出迎えなかった。ポツンと姿を見せたのは、外務副大臣だけ。生前、中村さんは現地での支援活動についてのインタビューで、日本国憲法9条に触れ「敵対条件を作らないというのが憲法の精神」と語っていた。憲法改正の実現を掲げる安倍政権が、中村さんを憲法擁護者とみなしていたのが冷遇の本当の理由、との声が市民の間から漏れる。

日本は「化石賞」にふさわしい国に

 12月、スペイン・マドリードで開かれたCOP25(国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議)。小泉進次郎環境相が11日、演説で期待された石炭火力発電の廃止に触れなかったことから国際的な批判が広がった。世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」は、地球温暖化対策に後ろ向きな国に贈る「化石賞」を日本を含む3カ国に贈ると発表。

 他方、気象変動の被害を2018年にひどく被った国のワースト1位は西日本豪雨などに見舞われた日本だったとする調査結果を、ドイツの環境シンクタンク「ジャーマンウォッチ」がCOP 25の会場で明らかにした。地球温暖化対策への被害最大国・日本の異様な消極姿勢が浮き彫りとなった格好だ。

 温暖化を押し上げる石炭火力については、欧州各国やカナダが将来の全廃を次々に打ち出している。今やトランプ政権の米国を除き、「脱石炭」が主要国の潮流になってきた。フランスが2021年までに廃止を公約したのをはじめ、英国、イタリアが2025年までに、オランダとカナダが2030年までに廃止すると発表。褐炭・石炭へのエネルギー依存度が飛び抜けて高かったドイツ(1990年当時、6割近い発電比率)も、2038年までの廃止を決めた。ドイツは「脱原発」に続き「脱石炭」も敢行し、再生可能エネルギーの拡大に向け、さらに舵を切ったのだ。

 世界の若者たちも、気候危機を訴えるスウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥンベリさんの「今すぐ行動を」の呼びかけに触発され、一斉にデモを立ち上げた。だが、日本政府はこの新たな流れに加わらずに傍観を決め、石炭火力設備の新増設や新興国への輸出増計画の廃止に踏み切らない。

 長期政権下、日本はまさしく凝り固まって変化しない「化石賞」にふさわしい国になりつつあるようだ。

(文=北沢栄/ジャーナリスト)

北沢栄/ジャーナリスト

北沢栄/ジャーナリスト

慶應義塾大学経済学部卒業後、共同通信経済部記者、ニューヨーク特派員などを経て、フリーのジャーナリストに。

Twitter:@sxegwipcaocqsby

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